名前の由来は開発符号のZ計画
スポーツカーを正確に定義するのは、意外と難しい。乗用車の車台とフロアパンを流用してボディーだけを変えた乗用車の派生車(スペシャリティーカー)などを除き、「一般の交通手段としての実利から多少離れたクルマ」と定義すれば、日産自動車の「フェアレディZ」は、世界で最も売れたスポーツカーといえる。
本書は、日産在籍時にフェアレディZの開発にかかわってきた筆者が記した開発の記録である。執筆の動機について筆者は、「フェアレディZの開発に功績があった方々が、次々と鬼籍に入られた。それらの方々の鎮魂の意味をこめて、記憶が確かなうちにその開発の経緯を書きとめておこうと思い立った」と語る。
さらに筆者は、「事実の記録なので、正確だが感動はない」と言う。しかし、第3章「フェアレディZの開発」から第6章「発売後の状況」までを読むと、当時の様子が生き生きと伝わってくる。名前の由来が開発符号の「Z計画」であること、実際の仕様書やレイアウト図面などの貴重な資料などが興味をそそる。