スマートフォン(スマホ)の標準規格に準拠する「FRAND特許」の損害賠償請求権を巡り、韓国Samsung Electronics社の日本法人(以下サムスン)が米Apple社の日本法人(以下アップル)を訴えていた控訴審で、知的財産高等裁判所は、2014年5月16日、判決を下した注1)。注目点は、損害賠償額の上限をFRAND条件に基づくライセンス料相当額に抑えたことだ。FRAND特許の権利を制限し始めた欧米の政策に沿った判断と言える。同日、知財高裁は両社間におけるFRAND特許に基づく差し止め請求の可否に関する2件の控訴審の判決も下した。
スマホ特許訴訟の頻発で、日米欧の知財政策が転換
植木 正雄 スターパテントLLP代表
注1)訴訟の発端は、サムスンの1件のFRAND特許権をアップルが侵害していないこと、サムスンがアップルに同特許権侵害に基づく損害賠償請求権を持たないことの確認をアップルが東京地裁に求めたことに始まる。第1審判決は、アップルによる侵害を認めつつも、サムスンによる損害賠償請求権の行使は権利乱用に当たると判断した。サムスンはこれを不服として控訴した。控訴審は、アップルによる侵害を認めるとともに「FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲では」損害賠償請求が権利の乱用にあたらないと判断して「iPhone 4」及び「iPad 2 Wi-Fi+3Gモデル」の売上高に対して995万5854円(うち「iPhone 4」は923万9308円)を超えない損害賠償請求権を認めた。
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