製造業がこれまで培ってきたものづくりの技術を駆使して、医療機器にイノベーションをもたらそうとの機運が高まっている。政府や地方自治体による産業振興の支援の下、技術を武器に市場参入を狙う日本企業が増えつつあるのだ。安定した需要と世界的にも成長が期待される医療機器市場はものづくり企業にとっては魅力的。一方で、薬事法への対応など面倒で分かりにくいことも多い。ものづくり企業が医療分野で活躍するための方策を探る。
医療×ものづくり
目次
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日本の製造業に大チャンス到来、世界で戦える革新製品の創出目指す
2014年4月に東京ビッグサイトで開催された医療機器の設計・製造に関する展示会「MEDTEC Japan 2014」。来場者が前年の2倍以上に急増するなど、医療分野におけるものづくりへの期待がかつてない程高まっていることが如実に表れた。出展企業からは「自動車や電機などの従来の産業だけに依存していると…日経ものづくり
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医療×ものづくり=新しい価値
日経ものづくり
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実際の心臓を精緻に再現、術前検討に威力
心臓モデル×3Dプリンター[クロスエフェクト]
「よくできてるわ。すごいな」「これは革命やな」─。本物に似た質感と精緻に再現された形状を持つ樹脂製の心臓モデルを見た心臓外科医は、感嘆の声を上げた(図1)。その心臓モデルを開発したのが、3Dプリンターなどを活用した試作を中核事業とするクロスエフェクト(本社京都市)だ。同社の軟質心臓モデルは医師などか…日経ものづくり
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極小の樹脂製歯車で、ペン型という新形態を実現
電動ピペット×マイクロ・アクチュエーター[アイカムス・ラボ]
極小の歯車「マイクロ歯車」を射出成形する技術を持つアイカムス・ラボ(本社盛岡市)も、非医療機器を足掛かりに医療・ライフサイエンス市場での事業を強化しようとしている。同社が2013年11月に発売した電動ピペット「Pipetty」は、医薬や生物の研究や検査・分析などの用途を狙った製品だ(図A)。細身で胴…日経ものづくり
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微細加工の技術を駆使して、自在に動く手術器具を開発
腹腔鏡手術用器具×チタン加工[二九精密機械工業]
βチタン*1と呼ぶチタン合金の精密加工を得意とする二九精密機械工業(二九精密、本社京都市)は、医療機器向けの機械加工で着実に事業を伸ばしている。もともと産業機器や分析機器向けの精密部品加工を得意としてきた同社だが、現在は医療機器向けの事業に力を入れている。直近3年で約10億円を同分野に投資するなど、…日経ものづくり
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あるようでなかったニッチ製品、肺へ確実に空気を送り込む
人工呼吸器×計測・制御[テクノサイエンス]
製販企業とならなくても、最終製品を受託生産する方法により医療機器市場に参入することはできる。テクノサイエンス(本社静岡県沼津市)は、地域の医工連携支援の枠組みを利用し、東京の製販企業と連携してそれまでなかった人工呼吸器用の付帯装置を開発した。日経ものづくり
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携帯用のアンテナ技術を応用し、確実・安全に骨折部を固定
骨折修復用ケーブル×ワイヤー加工[シンテック]
金属の加工や表面処理を得意とするシンテック(本社福島県いわき市)は、従業員数11人のベンチャー企業だが、経済産業省の「課題解決型医療機器等開発事業」を活用して独自の医療機器を開発。製販業を取得して自社製品で事業を拡大しようとしている。2015年3月の発売に向けて生産設備などの拡充を進めている最中だ。日経ものづくり
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利幅の大きいインプラント加工、難削材、単品、5軸が必須条件
病気やけがを負った患者が人体に埋め込んで使うインプラント。股関節や膝関節などの人工骨、歯科用ブリッジなどの総称だ。このインプラントに加えて、折れた骨を固定する際に使用する骨折プレートや、その締結に使う骨ねじなど、金属やセラミックスでできた医療系部品が今、日本の加工メーカーの注目を集めている(図1)。日経ものづくり
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高まる医療分野へ関心と期待、ハードルは法規制への対応や許認可
調査テーマ「ものづくり企業の医療分野への参入」
ものづくり企業の医療分野への関心は高い。今後の成長が期待できる上に、景気に左右されない安定した市場だからだ。現在は医療分野にかかわっていない企業でも、今後の参入を検討しているところは多い。一方で、ものづくりとは縁遠い医療現場とのやりとりや、法規制への対応、許認可などに難しさを感じている。日経ものづくり