この4月、実に久しぶりに入社した新人を前に話す機会がありました。自らを振り返れば就職して24年。人生のちょうど半分を過ごした業務の原点に立ち返ろうと、1990年4月の本誌を手に取り、愕然としました。あまりにも厚みが違うのです。300ページを超える号もあった当時と比べ、最近では100ページを多少上回る程度が普通です。

 新入社員を前に、謎解きを試みました。数ある理由の中で最も説得力がありそうだと選び出したのが、国内電子産業の衰退です。経済産業省の機械統計によれば、2013年の電子産業の国内生産額は11兆円。ピークの2000年の26兆円の半分未満です。本誌のページ数、とりわけ広告が、この急減速の影響を受けたのは間違いありません。

 議論の参考にしたのは、私が入社したときに編集長だった西村吉雄氏が日経エレクトロニクスDigitalに連載した原稿です。本号では、その論理の中核を特別企画「電子立国は、なぜ凋落したか」として再録。結論を一言で言えば、過去の成功体験に縛られ、新しい時代に即した体制への移行を渋ったことが、国内企業が競争力を失った元凶です。社会の変化に応じて自らを変革することの大切さを、自戒の念も込めて新人に語りました。

 事実、成長を続ける企業は自らを大胆に変えていくものです。約2年ぶりに本誌の単独インタビューに応じた台湾Foxconn社の郭台銘CEOは、シャープとの一連の行き違いを一顧だにせず、新たなビジョンと進捗状況を語りました(余談ですが、日本電気をNECと表記するのと同様、Hon Hai Precision Industry社はFoxconn社と表すべきだとの大槻記者の助言に、本号から従いました)。飽くなき事業拡大への意欲は依然として旺盛です。

 日本企業にも新たな成長のチャンスが訪れています。特集記事「1兆個センサー社会、始動」で紹介したのは、来るべきセンサー社会を一気に到来させようと狙う米TSensors Summit社の活動。同社の構想に賛同する、しないはさておき、その目指す領域で苛烈な競争が始まるのは確実です。この機会に将来を託すなら、価格競争に陥りがちなセンサー自体よりも、日本企業が必ずしも得意としないサービスやソフトウエアの分野で勝負する必要があるのでは。ここでも自社を刷新できるかどうかが問われます。

 新年度を迎え、次なる目標に走り始めた人々が、ほっと一息つける大型連休。編集長と呼ばれて、いまだに居心地の悪い筆者も、日本の電子産業に再び輝きをもたらす道筋は何か、考えを巡らせたいと思います。