前回(2014年4月号)、インドネシアのものづくり現場の状況を「急激な成長期における異常な活況状態」と表現した。これに対してベトナムのものづくり現場の状況を表現すると「周辺地域の成長スピードに追いつかない混沌の時代」となるだろう。

 ベトナムは10年以上前から発展の可能性に関して「アジアにおける次の国」と言われてきた。ところが現在のベトナムをみると、期待ほどの発展は実現できていないという印象だ。肩を並べる国として比較されていたタイにものづくり分野で水をあけられているばかりではなく、当時は技術的にも経済的にもかなり遅れていたインドネシアにさえも抜かれ始めている。最近では「ベトナムよりミャンマーの方が発展の可能性が高い。だから、次の進出ターゲット国はミャンマーだ」という声まで上がるようになった。

 ベトナムは、ミャンマーやカンボジアにも抜かれ、このまま伸び悩む国になってしまうのであろうか。それともやはり、ものづくり分野で大きな可能性を秘めている国なのであろうか。なぜ今、ベトナムのものづくりは眠ったままになってしまっているのか、現場から見たベトナムの現状を中心に報告する。