大手がひしめくエネルギー管理システムで独自の分野を切り開いている国内ベンチャーがある。小規模店舗向け電力見える化システム「ELP(Energy Literacy Platform)」を展開するSassor(サッソー)(本社東京)だ。特筆すべきはコスト競争力高さ。既に複数の外食チェーンの計60店舗で採用され、大幅なコスト削減を実現している。さらに、オフィス向けに新機能を加えたシステムをパートナー企業と共同で開発中だ*1

*1 チェーン店の場合、まず数店舗でトライアルを実施し、その上で導入店舗の拡大を図るケースが多い。現状の導入例はほとんどがトライアル店舗という。

 ELPの中核となる消費電力測定器は、電流センサーを組み込んだ6つのクリップ部と本体で構成される(図1)。クリップを分電盤の電線に取り付けると、センサーが電流を測定し、このデータを本体が無線で同社のサーバーにアップする。分電盤の電線は、個別の機器・設備につながっているので、同測定器によって最大で6つの機器・設備の消費電力をリアルタイムで測定できる。サーバーに飛ばされたデータは、ウェブサイトに分かりやすく表示されるので、機器・設備ごとの消費電力や合計の消費電力が一目で分かる。電力以外の途方もない可能性

図1●6つのクリップ部と本体から成る消費電力測定器
クリップ部に電流センサーを組み込んであり、分電盤の電線に取り付けると、そこに接続している機器や設備 の消費電力が分かる。製造は中国企業に委託している。
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 従来の電力測定サービスに比べたELPの特徴は、[1]設置工事が不要、[2]低コスト、[3]機器ごとの消費電力の見える化が可能なこと、である(表)。

表●ELP(Energy Literacy Platform)と従来のサービスの比較
Sassorの資料を基に一部修正して本誌が作成。
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 低コストにできるのは、情報のやり取りにインターネットを利用することで、自前のシステムが要らないためだ。ELPのサービス料金は年間12万円前後(月額1万円前後)。同システムを最初に導入した、スープ専門店Soup Stock Tokyoを展開するスマイルズ(本社東京)は、トライアル店舗で、年間約42万円のコスト削減が可能という結果を得た。電気給湯器や食器洗浄機の節電による効果が大きかった。導入店舗を増やせば、コスト削減は掛け算で効く。

 しかし、ELPはSassorにとって最初の一歩に過ぎない。その根幹には、IoT(Internet of Things)があり、ここがSassorの主戦場なのだ。