CAEによるシミュレーションの可能性が多様化してきた。かつては、もっぱら試作品による実験を置き換えてコストや開発期間を削減することが目的だった。しかし最近、実験では引き出し切れない結果を得ることを目的にしたシミュレーションが盛んに試みられるようになってきた。製品に関わる現象の深層が明らかになることで、設計が根本的に変わるとの期待がある。

 乗用車がコンピューター画面上で砂地に突っ込み、砂を巻き上げながら横転していく─。数秒に及ぶアニメーションは、有限要素法(FEM)による構造解析と流体解析を用いたシミュレーションの結果だ*1。この間、砂に生じる圧力、タイヤが受ける力などが刻々と変化する様子が分かる。

*1 以下、本記事では「シミュレーション」をCAE(Computer Aided Engineering)による数値解析の意味で用いる。

 こうした、実験ではうまく測定しきれないような現象をシミュレーションで解明する事例が増えている。シミュレーションの実力が向上し、カバー範囲が大きく広がったためだ。従来は得られなかったような知見を引き出すことも可能になってきた。