現在の構造のエンジンでは、希薄燃焼化や断熱化によって、まだ効率向上の余地がある。排気損失を減らすため、排熱を回収する技術の研究も進められている。しかし、こうした従来の延長線上の開発では、50%程度で効率向上の限界が来そうだ。このため、60%という常識外れの効率を目指す新たなエンジンの検討も進む。これまでのエンジンとは異なる構造・原理で燃料電池並みの効率を目指す。

 Part2では最新エンジンの効率向上技術を見てきたが、今後内燃機関の効率はどこまで向上する可能性があるのだろうか。ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンとも圧縮比14として効率を向上させ、車体や変速機の改良と併せて、30 %程度の燃費向上を実現したマツダの新世代技術「SKYACTIV」。その技術を発展させることで、同社は電気自動車(EV)と同等の環境性能を実現しようとしている。

 同社の試算によれば、小型車「デミオ」に第1世代のSKYACTIV技術を導入し、さらにハイブリッド車(HEV)にした場合のCO2排出量(Well-to-Wheel)は、すべての原子力発電所が停止した今の日本の電力事情を考慮すると、デミオEVとほぼ同等になるという(図1)。

図1 マツダが目指す内燃機関の進化の方向
第2世代の「SKYACTIV」で、現在の火力発電中心の状況におけるEV(電気自動車)と同等のCO2排出量(Well-to-Wheel)を目指している(マツダの資料を基に本誌が作成)。
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 マツダは第2世代のSKYACTIV技術によって、HEVにしなくてもデミオEV並みにCO2排出量を減らすことを目指しており、さらに第3世代のSKYACTIVでは、HEV化することで東日本大震災以前の、原子力発電所が稼働していた時期の電力事情でも、デミオEVと同等にすることを目標にしている。これが同社における最終的なゴールだという。

 同社は、第3世代のSKYACTIVで、広い運転領域で高い熱効率を実現することを目指しており、これが実現すれば、HEV化する場合でも、組み合わせるモータ、電池は小さいもので済む。そうなれば、エンジン中心のパワートレーンで、EV並みの環境性能を実現できることになる。