国立環境研究所は、所内での実験により、直噴ガソリン自動車がポート噴射のガソリンエンジンより多くの微粒子を排出することを確認した。粒子の量は、個数を測っても質量を測っても、従来のポート噴射ガソリン車より大幅に増える(図1)。

図1 直噴ガソリン車、ポート噴射ガソリン車、ディーゼル車からの走行1km当たりの排出個数・排出質量
ディーゼル車は今回の実験対象ではなく文献値。この実験は、欧州規制の方法と走行条件や粒子個数の測定法が違うので、欧州、日本の規制値と厳密に比較することはできない。
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 直噴ガソリンエンジンはガソリンが霧化、気化するための時間、距離とも限られているため、微粒子を発生しやすいと考えられてきた。一方、高圧で噴射するため燃料液滴が小さい分だけ有利という異論もある。差し引きプラスなのかマイナスなのかは理論的、定性的な議論では結論に至らず、国立環境研究所のような信頼できる第三者機関の実験値が待たれていた。

 2011年式の直噴ガソリン乗用車2台(国産、欧州製各1台)と、比較のため2007年式のポート噴射ガソリン車(国産の直噴ガソリン車と同じ車種)の計3台を対象として実験した(表1)。排ガス試験は、研究所にある低公害車の実験施設を使って、「JC08モード」を中心に試験、解析した。粒子の個数と粒径分布を測定し、粒径2.5μm以下の微小粒子(PM2.5)試料についても分析した。

表1 測定した車両の諸元
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 結果は1km走るごとに排出する粒子の個数(排出個数)と、粒子の質量(排出質量)で整理した。国産直噴ガソリン車からの排出個数は、ポート噴射ガソリン車の10倍以上だった。欧州製の直噴ガソリン車は、国産直噴ガソリン車の約5倍と、さらに多かった。