デンソーが開発した、結晶のa面方向に成長を繰り返すことで転位密度を大幅に削減するRAF法(repeated a-face method)――。前回は昇華法による結晶成長技術について紹介した。今回は、処理時間の短縮化が期待できるガス成長法(高温CVD)を用いた、新たな大口径ウエハーの量産技術について解説してもらう。(本誌)

 前回(第9回)で解説したように、RAF法(repeated a-face method)を用いた高品質のSiC結晶成長技術が確立し、Si結晶並みの品質を持つSiCウエハーが現実的となってきた。今後、SiCデバイスの本格的な普及のためには、ウエハーの大口径化、高品質化技術に加えて、そのウエハーを安価に安定的に供給するための量産技術の確立が大きな課題となる。

 現状、市販されているSiCウエハーはすべて昇華法で成長させている。昇華法の結晶成長速度は0.3~0.5mm/hであり、Siの引き上げ法の数cm/hに比べて非常に遅い。また、昇華法はるつぼ内で成長させるため、原料が枯渇すると成長が止まってしまう。従って、インゴットの長さは長くても50mm程度となる。

 一方、Siのインゴットはメートル単位で連続的に引き上げ成長される。これではSiCがSiに比べて、どんなに性能が高いと言っても、コスト的にとてもかなわない。