パイロットの筆記用具「フリクション」シリーズは、単なるヒットを超えたお化け商品である(図1)。筆記用具は、年間1000万本売れれば大ヒットといわれるが、同シリーズは発売した2006年に1500万本、2012年には2億2000万本が売れた(図2)。しかも、今なお販売本数が伸びており、2013年の販売本数は前年を上回る見込みだ。販売地域も欧州や日本、北米、アジアなど世界各地に広がっている。

図1●ペンの後端部のゴムで消せる
「フリクション」シリーズのボールペンは、書き損じなどを簡単に消して書き直すことができる。
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図2●フリクションシリーズの世界での販売本数の推移
2006年にまずフランスを中心とした欧州で発売された「フリクション」シリーズは、2012年には世界で2億2000万本が販売された。2013年は、それをさらに上回る見込みだ。最も販売本数が多いのは日本である。
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 同シリーズの最大の価値は、「書いて、消して、また書けること」(同社)。代表的な製品であるノック式ボールペンでは後端部に半透明なゴムが付いており、書き損じた場合は、ペンを上下さかさまに持ち替え、そのゴムでこすれば簡単に消すことができる。しかも鉛筆書きを消しゴムで消すのとは異なり、消しかすが全く出ない。これまでのボールペンとの違いは明らかだ。

 ところが商品化の検討段階では、この違いが利用者の購買につながるほどのウリになるかどうかの見極めがつかず、商品化はすんなりとは決まらなかった。