本誌の連載「ホンダ イノベーション魂!2」でお馴染みの小林三郎氏はエアバッグを開発し、エアバッグ搭載のホンダ車を大ヒットさせた立役者。その小林氏に、ヒットの本質をどう見極めるかを聞く。

 皆さんは「マルちゃん正麺*1」を食べたことがあるだろうか。俺はすぐに食べたよ。うまかった。最近はうどんも発売されていて、こちらもかなりいける。

*1 マルちゃん正麺 東洋水産が2011年11月に発売した袋入りインスタントラーメン。生麺風の食感などが評判となり大ヒットした。うどんは2013年10月の発売。

 異なる分野のヒット商品に学び、自社の新商品や新サービスの開発に生かすことはとても大事だ。ただ、それは簡単にはできない。「ものの見方と考え方」を身に付ける必要があるからだ。その出発点が、「見てみること」、そして「自分で試してみること」である。おやじ(ホンダ創業者の本田宗一郎のこと)が猛烈に怒ったのはこの2つを軽視したときだった。「見もせんで、やりもせんで何が分かる」と、真っ赤になって怒鳴っていた。

 インスタントラーメンが皆さんの仕事に直接関係することはまずないだろう。しかし、これだけ話題になっている商品なのだから、食べてみないと。ヒットした商品はすぐに実物を見たり使ってみたりした方がいい。そんな好奇心がヒットの本質をつかむための第一歩だからだ。

 この話をすると「なかなか時間が取れなくて」と言い訳する人が必ずいる。しかし、忙しいのはみんな同じだ。そこを何とかして時間をつくって、体験を重ねないといけない。こうした体験は、必ず皆さんの蓄積になって、ヒット商品づくりを後押ししてくれる。