日本の製造業は、製造現場の人員が急激に減少し、強さの源泉とも言うべきものづくりの「現場力」の弱体化の危機にひんしている。国内市場の縮小や、新市場を求めて工場を海外にシフトさせたことが主な要因だ。実際、リーマン・ショック前の2007年までは1170万人前後あった日本の製造業の就業者数は、2012年12月末で998万人とついに1000万人を割った(図1)。実に5年で15%もの減少だ。

図1●日本の製造業就業者数の推移(毎年12月時点)
2008年までは1100万人をキープしていたが、リーマンショックで大きく減少。その後も減り続け2012年には998万人と、1000万の大台を切った。総務省の労働力調査から。
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 ただし、工場の海外シフトが加速する中でも、日本の工場は海外工場の指導拠点としてまだまだ重責を担う立場にある。つまり、日本の現場力の低下は、そのまま海外拠点の競争力の低下につながり、激しいグローバル競争を生き残る上で極めて大きな問題なのだ。

 例えば、ある消費財メーカーの海外生産子会社では、本社から派遣された日本人が工場運営を一手に引き受けていたが、日々増え続ける出荷にひたすら追われる状態だった。当初は問題にならなかったが、やがて、利益が上がらない、品質問題が増える、納期遅れが増加するなど、問題が雪だるま式に増えていった。

 遅まきながら事態に気付いた日本の本社が調べてみると、現場はものであふれ、生産性、品質、安全も確保できない状態になっていた。加えて、その日の計画も進捗も全く把握できておらず、出荷に追われて生産を続けているだけの疲弊した職場になっていたのである。