事故は語る
目次
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油タンカーが整備作業中に爆発、可燃性ガスの除去が不十分
2014年5月29日、姫路港南方沖で停泊して整備作業中だった油タンカー「聖幸丸」において、貨物油タンクが爆発して炎上するという事故が発生した。船長が死亡し、乗組員4人が熱傷などの重傷を負うという大事故だった。荷揚げ後に可燃性ガスを十分に排出しないまま、着火の危険性が高いバーナー作業を行っていた。
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改正航空法施行で規制が始まったドローン業界、メーカーは新たなビジネス創出に期待
性能の進化と低価格化によって、個人でも簡単に入手・操縦できるようになった無人飛行機(ドローン)。空撮だけでなく点検や物流など幅広い活用が期待されている。しかし、普及に伴い事故も多発。事態を受けてドローンを規制対象に加えるべく改正された航空法が2015年12月10日に施行された。
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天津爆発事故に見る化学物質のリスク、正しい情報で海外の事故へ対応
2015年8月12日に中国・天津港で発生した大規模爆発。国内の報道などによると消防隊の放水した水と化学物質が反応して大爆発に至ったのではないかとみられている。しかし、倉庫には多種多様な化学物質が大量に保管されており、事故原因や2次被害についてさまざまな憶測が流れた。聞き慣れない化学物質にどんなリスク…
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折れていた放射性廃棄物輸送容器のボルト、基本的知識の欠落が招いた脆性破壊
2015年2月、低レベル放射性廃棄物入りのドラム缶を運ぶために使う輸送容器で、容器の蓋を固定するボルト(蓋ボルト)が折れているのが見つかった。これを受けて輸送容器を保有する原燃輸送(本社東京)が全国の輸送容器の蓋を調べたところ、計5本の蓋ボルト折損が確認された。そこには、基本的な材料知識の欠落が潜ん…
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エスカレーターのハンドレールに持ち上げられ転落、ニュアル部の特殊な形状で危険性が増していた
事故の再発防止を徹底するためには、その原因究明が不可欠だ。2009年4月8日に東京都内で発生したエスカレーター事故に関する調査は、国土交通省だけでなく消費者庁も実施し、それぞれ異なる見解を示している。しかし、これらの調査報告書では触れられなかった視点での問題点が今回明らかになった。(本誌)
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またも輪重のアンバランスで列車が脱線、過去の事故が新たな事故の発端に
2013年9月17日、東日本旅客鉄道(JR東日本)の中央本線相模湖駅において、停止直前に列車が脱線してホームと接触するという事故が発生した。乗客約100人などに負傷者はいなかったが、脱線は大惨事になりかねない事故だ。脱線の原因を探っていくと、その10日余り前に高円寺駅で発生した人身傷害事故による部品…
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荷物用エレベーターの転落事故、開かないはずの扉が開いてしまった
エレベーターには、安全を確保するための原則が幾つか存在する。「“かご”が止まっていない階の扉は開かない」というのもその1つだ。その原則が破られた時、悲劇は起きた。かごがないのに扉が開いた原因は、安全装置の不備にあった。
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傘の骨から飛び出すガラス繊維、日用品への普及で危険性が顕在化
成形が容易で耐候性に優れ、軽量ながら高い強度を持つガラス繊維強化樹脂(GFRP)。日用品への適用が広がるに伴って、思わぬケガに至るケースが増えている。傘やテントのGFRP製の部品に触った消費者の手の指に、その表面から飛び出した極細のガラス繊維が刺さるといった事例だ。使いやすい新材料のリスクが、正しく…
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飛行機のエンジンが着陸後に発火、ナットに加えて乗員の危機意識に緩み
2013年5月6日の正午過ぎ、大阪国際空港(伊丹空港)に着陸して誘導路へ向かっていた小型ジェット旅客機の操縦室で、右エンジン火災検知装置の故障を示す注意メッセージが表示された。続いて右エンジン火災の警告メッセージも作動。同機は走行を続けながら火災への対応を実施し、駐機場で停止した後に消火剤を射出した…
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貨物列車脱線は「必然の事故」、レールの異常を把握するも対応せず
2013年9月19日、JR函館本線の大沼駅構内で運行中の貨物列車が脱線した。直接的な原因は、レール(軌道)が整備基準値を超えて変形していたこと。だが、根本的な原因は、その状態を長らく放置していたことにある。ずさんな保守体制がもたらした「必然の事故」だった。
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電気炉から熱風が噴き出し5人死傷、新設備導入のリスク評価に盲点
2014年4月25日の18時過ぎ、コマツキャステックス(本社富山県氷見市)の工場で鉄スクラップなどの精錬作業中だったアーク炉から突如炎が上がり、熱風が噴き出した。昇温のための酸素の吹き込み(吹精)が完了した直後の事だった。熱風の勢いで炉の蓋が開くなどして溶鋼が周囲に飛散するとともに、熱風が炉前で作業…
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単なる乗り過ぎだけではなかった、甘い設計が招いたエスカレーター逆走
ガッガッガッ─。2008年8月3日午前10時過ぎ、東京国際展示場(東京ビッグサイト)の西展示棟「アトリウム」の1階と4階を結ぶ上りエスカレーターが、異音を発してぎくしゃくした動きをみせたかと思うと、大勢の人を乗せたまま突如逆走して下降し始めた。当日開催のイベントに集まった大勢の来場者が、開場とともに…
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難燃剤が原因で電源プラグが発熱、素材変更に気付かず絶縁性が低下
難燃性の部品を採用することは、火災事故を防止するために有効な手段の1つだ。ところが、情報機器の電源プラグにおいて難燃剤が原因とみられる発煙、発火が相次いだ。その背景には、難燃剤に添加されている赤リンの存在があった。難燃性は保たれていたものの、絶縁性が劣化して加熱を引き起こしたのだ。
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東京タワーのエレベーターから部品が落下、原因は老朽化のみならず、設計・施工に甘さ
2013年9月17日の午後、東京タワーにある1台のエレベーターが特別展望台から約100m下の大展望室に向けて降下を始めたところ、かごのガラス窓が突然割れた。長さ50cmほどの折れ曲がった鋼板が、かごの入り口とは反対側にある展望用の窓ガラスを突き破って飛び込んできたのだ。事故の発生と同時に安全装置が働…
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Boeing787のLiイオン2次電池過熱、内部短絡が引き金の熱暴走か
民間旅客機として、2次電池に初めてリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)を採用したBoeing787型機。しかし、発煙や焼損などのトラブルが相次ぎ、一時は運行停止に陥った。事故調査の結果、2次電池を構成する8つのセルのうち1つが内部短絡によって発熱し、それが引き金となり全てのセルが熱暴走したことが…
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けん引中のディーゼル機関車から発火、曖昧な作業手順と確認の甘さで変速機が過熱
2013年2月4日の夜、東日本旅客鉄道(JR東日本)上越線を走行していた2両編成の列車の運転士は、後ろに引かれるような衝撃を感じた。計器に異常はなかった。しかし、振り返って後方を確認すると、2両目のディーゼル機関車から火の手が上がっていたのだ。非常停止して消火活動を行ったため、じきに鎮火したものの、…
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携帯機器の充電用コネクターが異常発熱、変形や異物が端子間の短絡を招く
2013年8月8日、スマートフォンと充電器をつなぐケーブルのコネクター(充電用コネクター)から異臭が発生し、布団が焦げるという事故が熊本県で発生した。この際、被害者は軽傷(火傷)を負っている。実は、充電器から電力は供給されていたものの、充電用コネクターはスマートフォンには差し込まれていなかった。それ…
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沖ノ鳥島で工事中の桟橋が転覆、安易な補強や変更で復原力が大幅に低下
2014年3月30日の朝7時30分頃、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の西岸付近で据え付け工事中だった桟橋が、左右に大きく揺れて転覆した。桟橋上で作業をしていた16人が海に投げ出され、うち7人が死亡、4人が負傷する惨事となった。当時は波も風もさほど強くなく、設計上は転覆するはずのない桟橋だった。同年7月に…
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現場の事故データを予防に生かし、乳幼児用いすの安全基準を改訂
子どもの事故が後を絶たない。事故の中には、製品側の工夫で予防できたものも多い。2014年7月に乳幼児用いすに関する安全基準が改訂される。この改訂では新たな試みとして、救急搬送の際に収集された事故事例を分析・活用した。基準改訂に携わった産業技術総合研究所の西田佳史氏に、子どもの事故予防に向けた基準作り…
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信頼揺るがした重大事故・注目事故、日本の安全文化を見つめ直す
日経ものづくりでは、2004年4月の創刊以来、コラム「事故を語る」を中心に、「特集」「フォーカス」などで数多くの事故を取り上げてきた。その対象は、自動車、鉄道、産業機器、原子力発電所、化学プラント、消費生活用製品など多岐にわたる。