本連載ではこれまで、6回にわたって会計の全体像、財務諸表の構造、財務分析の基本などを学んできました。ここからは、会計を駆使して会社のことを俯瞰(ふかん)して見る手法を学びます。端的に言えば、マネージャー(管理職)として、日々の費用をなるべく少なくし、可能な限り売上を多くし、利益を最大化させる責任を全うするための手法を学ぶということです。

 エンジニアであっても、管理職というポジションに就けば利益を最大化させる責任を負います。少ない初期費用で多くの新製品を生み出す、1円でも少ないコストで製品を量産する方法を開発する、あるいは部門横断で新製品を改良してより多くの売上を獲得する、などなど、挙げればきりがありません。

 ここで余談ですが、マネージャー(管理職)という存在について少し考えてみたいと思います。マネージャーは多くの場合、管理職と訳されますが、「部下のノルマを管理する」「複数の開発プロジェクトの進捗をExcelで管理する」というのは言葉本来の意味から言えば、マネージャーの仕事ではありません。

 マネージャーは英語ではmanagerと書かれます。これには“経営者”という意味があり、その語源は「手を使って操作する」だと言われています。つまり、部や課の経営者として困難を乗り越え、自らの手でなんとか経営をやり遂げるという重責を担うポジションなのです。この責任を全うする上で、売上・費用のマネジメントを会計の視点で行うセンスが必須なのは言うまでもありません。このように、外部に公開する財務諸表を作るための会計ではなく、自社事業のマネジメントで活用する会計のことを「管理会計」と言います。