今回からは財務分析を取り上げます。財務分析とは、決算書の数字を用いて色々な角度や視点で企業(事業)を分析・評価する行為です。決算書の数字を「ただの数字」としてとらえるのではなく、様々な意味を持つ「情報」として使いこなすわけです。この財務分析のセンスを身に付けると、自社のことだけでなく、同業他社や取引先、提携先などの経営状況が見えてくるようになります。

 例えば、自社のことであれば、経営上の問題を見つけて改善策を考える時の「あたり」を付けるのに役立ちます。財務分析を駆使して、問題がありそうなところを最初に見つけておくのですね。その他、新規で取引をする時に「この会社と取引しても大丈夫かな? お金をちゃんと払ってくれるかな?」など、取引先の経営状態を把握することもできるようになります。これを与信管理と言います。通常、この与信管理は経理・財務部門の方がしっかりと行ってくれています。

 財務分析で使われる用語は、社内の様々な重要会議だけでなく、新聞やビジネス書でもたくさん出てきます。「会計センスのあるエンジニア」を目指すのであれば、財務分析は絶対に欠かすことの出来ないトピックなのですね。

 では、財務分析の基本を一緒に学んでいきましょう。

財務分析には3つの切り口がある

 財務分析は、主に以下の3つの切り口で行われます。

  • ■収益性分析
  • ■安全性分析
  • ■効率性分析

 収益性分析とは、その名の通り「ちゃんと利益を得ているのかな?」を分析・評価するもので、主に損益計算書を用います。エンジニアの方でも、部署横断の新製品開発プロジェクトや部門の責任者になれば、この損益計算書を見る機会が増えてきます。会社単位だけでなく、事業・部門単位でもこの収益性分析は使うことがありますから、とても重要な切り口です。

 次の安全性分析は、簡単に言うと「この会社は潰れないかな?お金を払ってくれるかな?」を分析・評価します。こちらは主に貸借対照表を用います。この安全性分析をエンジニアのみなさんが主体的に担当することはほとんど無いと思いますが、会社の幹部クラスを目指すのであれば知っておかなければなりません。エンジニアの日々の活動に大きく関係している指標も含まれています。

 最後が効率性分析です。これは主に「この会社は資産・負債・純資産を効率よく使っているかな?」を分析・評価します。こちらは主に損益計算書と貸借対照表を用います。金融機関や投資家などの利害関係者が重視する指標が多く、こちらもエンジニアのみなさんが主体的に担当することはほとんどないと思いますが、やはり幹部クラスを目指すのであれば知っておいた方が良いですね。