故障検出機能

 安全リレーモジュールによって実現できる重要な機能として、故障検出が挙げられます。安全制御システム内部で故障が発生した場合に、そのことを検出した上で機械を安全に停止させる機能です。ここでは、前出の非常停止スイッチやコンタクタなどから成る安全制御システムを例に、安全リレーモジュールを用いた場合と、一般的なリレーを用いた場合を比較することで、安全リレーモジュールの故障検出機能を説明します。

 図4に安全制御システムの例として、モータの運転開始/非常停止システムを示しました。非常に複雑な図なので、ここでは要点に絞って説明します。

図4●安全制御システムの例(モータの運転開始/非常停止システム)
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[A]運転開始時
 [A]は、スタートスイッチSを押してモータを停止した状態から運転を開始するまでの状態を時系列に並べたものです。点線で囲った部分が安全リレーモジュールの主要部分です。以下、状態1~4を順に説明していきます。

状態1:操作前(モータは停止)
状態2:スタートスイッチSを押すと、リレーR3のコイルが励磁し、R3のNO接点がオンになるので、リレーR1と同R2のコイルが励磁する
状態3:R1とR2のNO接点がいずれもオンになって、モータMが運転を開始するとともに、R1とR2のNC接点がオフになるので、R3のコイルの励磁が解除される
状態4:Sから手が離れても、自己保持回路が機能し、Mは運転を続ける

[B]非常停止時(非常停止スイッチ操作時)
 [B]は、非常事態が発生して非常停止スイッチEを押したときの状態です。安全リレーモジュールの故障検出機能を説明するために、ここではリレーR1のNO接点が溶着した(常時オンになった)と仮定しています。

 非常停止スイッチEを押すと、リレーが正常に動作する場合は、リレーR1とR2の励磁が解除され、これらのNO接点はオフになり、モータは停止します。R1のNO接点が溶着している場合、この接点はオンのままですが、R2のNO接点はオフになるので、やはりモータは停止します。

[C]再起動時
 [C]は、非常停止スイッチEをリセット状態、つまり[B]の状態から、再度スタートスイッチSを押してモータを再スタートさせようとしている状態です。ここでも、リレーR1のNO接点が溶着していたと仮定します。安全リレーモジュールの故障検出機能は、ここで真価を発揮します。

 この状態では、Sを押してもR1のNC接点はオンにならない(R1のNO接点が溶着している)ので、リレーR3のコイルは励磁しません。そのため、R1とR2のコイルも励磁されず、モータの運転を開始できません。R1ではなくR2のNO接点が溶着した場合も同様です。これが、安全リレーモジュールの故障検出機能となります。強制ガイド式リレーだからこそ、このような機能を実現できています。