LINE

 前回からの続きで、無料のクラウド・サービスを利用してビジネス環境を構築する例を紹介する。今回はLINEの活用例である。ビジネスの現場でよく聞かれる逆境は、社員からアイディアが出て来なくなることである。

 それは会議、会議の連続で社員が外部からの新鮮な情報を入手できなくなり、アイディアが枯渇して堂々巡りの会議になっている場合が多い。解決策としては、スマホなどの携帯できるネット端末で社内コミュニケーションを維持しながら現場に出かけさせ、人と会ったりして生きた情報に触れさせることである。このコラボレーションに最適なのがLINEである。

スポーツ界でもLINE活用が広がる

 これまではmixi、Twitter、Facebookをコミュニケーション手段として使うケースが多かったが、今年になってLINEをメインに使うようになっている。

 日本人選手たちは国内と海外の間を移動することが多く、持ち運びに便利で通信環境が一体化しているスマホをメインに使う。スマホはパソコンのように長い文章作成ではなく、短いメモのようなメッセージを送受信するのに適している。

 また、スマホは通信回線が地域によっては弱かったり、不安定だったりするため、テキスト情報のやり取りが中心になる。当然、写真、動画、音楽などは重く、送受信がいやになってしまうので避けがちだ。私的感想としては、LINE環境では写メした画像データを送受信してみるとストレスなくサクサクできるように思う。

 プロ選手たちも同じように感じているようで、LINE環境で自分のプレーを写真や動画でコーチに送り、アドバイスを随時もらうようにし始めている。スマホで撮影 → LINEで送信 → LINE内で意見交換 → その場でプレー修正、というプロセスだ。

 このプロセスは、ブラジルで活躍する選手とスペインの名コーチの間や、オリンピック会場にいる選手と母国に残る指導者(長年苦労を共にした)間でやりとりされているからおもしろい。選手によっては、「あのコーチでないと、あのようなアドバイスは受けられない。だから地球の裏側にいてもすぐに回答を送ってくれるLINEはありがたい」と絶賛する。

 ビジネス・シーンではどうなるか――。

 もしメールを送るのに10秒かかり、その返事を待つのに10秒以上かかると、コミュニケーションは円滑に進まない。今すぐに意見が聞きたいのに、途切れ途切れになっていたのではイヤになってしまい、続くものも続かなくなる。その点、LINEはもともとがチャットサービスなので、送信・受信とも1~2秒と軽く、会話が弾む。

 会話が弾むと問題解決の提案や意思決定がスムーズになり、速くなるのが実感できる。「こんなことがある」→「それなら、こうしたらどうだ」→「いや、こうしよう」→「そうだな、そうしよう」→「これを加えてはどうだ」→「いいね」といった感じで建設的な意見が相乗効果を生むことにつながる。

 まとめると、以下のようになる。

1)通信環境が多少不安定でもスマホだけでコミュニケーションがサクサクできる。このため、メンバー間の質疑応答やブレストなどにはLINEが最適なオンライン環境となる。長い文章ではなく、一つのことを自分の言葉で簡潔に述べることが、コラボレーションという建設的な会話を円滑にし、アイディアがたくさん出る要因となる。
2)基本的にメールや電話が無料で使える。電話番号で登録できるのでメンバー登録もその場で簡単にできる。
3)スマホで読み書きできるので、スマホがノートになる。アイディアが浮かんだら、その場でポケットからスマホを取り出しLINEに書き込めば、みんなと情報共有できる。写メを送信して、そのビジュアル資料を基に意見交換できる。