汎用リレーの構造と動作

 次に、強制ガイド式リレーとの比較のために、汎用リレーについて説明していきます。本来、汎用リレーは一般の制御システムに用いるものであって、安全に関わる制御システムに適用できる機器ではありませんが、あくまで比較のために「もし汎用リレーを用いて安全に関わる制御システムを構成するとしたら」という前提での説明とお考えください。

 図2に、電磁石とスイッチが1つのケースに収められた汎用リレーの構造を示します。

図2●汎用リレーの構造
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 汎用リレーでは、NO接点とNC接点が一体となっていて、電磁石に電圧を印加していない状態ではNC接点がオン(NO接点がオフ)、電圧を印加した状態ではNO接点がオン(NC接点がオフ)になります。このように、電磁石への電圧の有無によって接触する接点が切り替わるスイッチ接点を「C接点」といいます。

 動作原理は、以下の通りです。電磁石に電圧を印加していない状態では、電磁石と鉄片は離れており、電流はC端子からNC端子に流れます。電圧を印加した状態では、鉄片が電磁石に引き寄せられ、電流はC端子からNO端子に流れるようになります。電圧の印加をやめると、ばね(復帰ばね)の力で鉄片が再び電磁石から離れます。

 汎用リレーは、NO端子とNC端子がC端子を共有する構造となっています。一般に、動力制御用回路と監視用回路は電圧が異なる別々の回路とする場合が多く、1個のC接点に動力制御用回路および監視用回路の制御という2つの役割を持たせることは実際にはほとんどありません。従って、少なくとも2個以上のC接点を用いて、動力制御用回路を制御する系統(以下、系統Aとする)と監視用回路を制御する系統(系統B)を用意する必要があります。具体的には、系統AのNO接点を動力制御用回路と接続、系統BのNC接点を監視用回路と接続します。その上で、強制ガイド式リレーと同じ状態1~3において汎用リレーがどう動作するのかを表2に示しました。

 状態1と2では、接点の配置など構造に多少の違いはあるものの、汎用リレーのNO接点やNC接点は強制ガイド式リレーと同様に動作します。ところが、状態3の動作は異なります。汎用リレーにおいて、系統AのNO接点が溶着した状態で電磁石への電圧の印加をやめても、NO接点はオンのままなので、機械は稼働し続けます。一方、系統Bは電磁石への電圧の印加をやめたことで、NC接点がオフからオンになり、「機械は稼働していない(停止した)」と認識してしまいます。この場合、オペレーターが危険な状況に陥る恐れがあります。従って、安全に関わる制御システムに汎用リレーは適しておらず、強制ガイド式リレーを用いなければならないことがお分かりいただけると思います。

表2●汎用リレーの構造と動作
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