強制ガイド式リレーの構造と動作

 表1に、強制ガイド式リレーの構造と動作を示しました。強制ガイド式リレーは、NO接点(Normal Open、常時開)接点およびNC(Normal Close、常時閉)接点という2種類の接点を持ちます。NO接点とNC接点は壁で仕切られていて、互いに絶縁されていますが、リンク機構(ガイド)によって機械的につながっており、電磁石への電圧の有無に応じてNO接点とNC接点が連動する仕組みです。具体的には、電磁石に電圧を印加していない状態では、NO接点はオフ、NC接点はオンです。電磁石に電圧を印加すると、NO接点はオン、NC接点はオフになります。

表1●強制ガイド式リレーの構造と動作
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 例えば、機械の稼働/停止を司る制御システムに強制ガイド式リレーを用いる場合、NO接点は動力制御用回路に、NC接点は監視用回路に接続します。そうしておけば、NO接点がオンのとき、すなわち電磁石に電圧を印加した状態(エネルギを投入した状態)のみ機械が稼働し、エネルギを遮断すれば機械が停止するので、安全を確保しやすくなります。だからこそ、動力制御用回路にはNO接点を用いるのです。

 一方、NC接点は、電磁石に電圧を印加していない状態(機械が停止している状態)ではオンになります。すなわち、安全な状態では電流を流し、危険な状態(機械が稼働している状態)では電流を流さないので、安全状態を検出するための監視用回路に適しています。

 このように、強制ガイド式リレーでは、1組のNO接点とNC接点に動力制御用回路および監視用回路の制御という2つの機能を持たせられます。ガイドによってNO接点とNC接点が連動する構造なので、リレーの状態を正確に監視できるわけです。

 ちなみに、表1ではNO接点とNC接点の数がそれぞれ1個だけに見えますが、実際には機械の駆動源などとして用いられるモータの3相交流回路を制御するために、3組のNO接点とNC接点を備える製品が一般的です。以上の説明をふまえて、表1の状態1~3について順に説明していきます。

状態1(電磁石に電圧を印加していない状態)
 電磁石に電圧を印加していない状態では、NO接点はオフとなり、機械は停止しています。一方、NC接点はオンとなり、機械が停止しているという信号(情報)をコントローラなど他の機器に伝えます。

状態2(電磁石に電圧を印加している状態)
 電磁石に電圧を印加し、NO接点がオンになりました。これに伴いNC接点はオフとなるので、機械が稼働しているという信号(情報)を伝えます*2

*2 正確には、機械が停止しているという信号(情報)が遮断されることによって、機械が稼働していると判断しています。

状態3(NO接点が溶着している場合に、電磁石への電圧の印加をやめた状態)
 電磁石への電圧の印可をやめるとNO接点はオフになるはずですが、溶着しているのでオンのままです。すると、ガイドによってNO接点と連動しているNC接点はオフの状態を維持しています。NO接点はオンのままなのでオペレーターの意図に反して機械は稼働し続けていますが、NC接点もオフのままなので監視用回路はその状態をきちんと認識できています。もし機械が稼働し続けているにもかかわらず、NC接点とつながっている監視用回路が「機械が停止した」と誤認識すると、思わぬ災害を招く危険性がありますが、強制ガイド式リレーなら少なくともそうした心配はありません。

 電磁石への電圧の印可をやめたのにNC接点はオフなので(本来はオンになるはず)、他の正常な系統と照合することなどによって、リレーに異常が発生していると分かります。強制ガイド式リレーは、溶着した接点をはがせるわけではありませんが、溶着の発生を検知できるという特徴を備えています。

 このように、安全に関わる制御システムでは、過電流などでリレーの接点が溶着して離れなくなる危険性を考慮し、監視する必要があります。そうした監視の仕組みを設けないと、実際は機械が稼働しているにもかかわらず誤って停止しているという情報がオペレーターに示される恐れがあり、非常に危険です。