AGVの安全走行への応用

 セーフティ・レーザスキャナを応用した例として、工場の自動搬送機(AGV:Automatic Guided Vehicle)が挙げられます(図11)。AGVは、工場の床に敷かれている磁気テープに沿って無人走行する搬送機です。

図11●AGVにおけるセーフティ・レーザスキャナの役割

 AGVでは、安全を確保するために、セーフティ・レーザスキャナで前方に障害物や人がいないかどうかを常に監視しながら移動します。警告領域に人がいた場合はAGVを減速させ、さらに防護領域に人が進入してきた場合はAGVの動力を遮断するなどして停止させます。人などとの衝突を防ぐには、安全距離に基づいて防護領域を設定する必要があります。ここでは詳細を割愛しますが、「AGVの速度」と「停止するまでに必要な時間」を考慮した特定の計算式を用います。

 走行中に進行方向が変わる際には、それに応じて検出領域も切り換えます(図12)。こうした制御を実現するには、走行ルートに応じた検出領域パターンをあらかじめ作成し、セーフティ・レーザスキャナに記憶させておく必要があります。

図12●進行方向に応じた検出領域の切り替え
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使用上および設置上の注意点

 セーフティ・ライトカーテンの場合と似ていますが、以下のような点に注意が必要です。

■蛍光灯、太陽光や赤外光などが光学窓に直接入らないようにする
■光学窓に水滴や汚れが付かないようにする
■検出領域の近くには反射率の高い壁などを設置しない(誤検出の原因になる)

今後の技術動向

 今回のセーフティ・レーザスキャナや前回のセーフティ・ライトカーテンは、いずれも2次元(面)の検出です。今後は、技術の進歩とともに3次元(空間)の存在検出技術の適用が進むものと考えられます。例えば、レーザスキャナでも3次元検出用途のものがありますし、カメラ(イメージセンサ)を用いた3次元検出機器も実用化されてきています。こうした技術が、安全分野にも広がってくるでしょう。

 今回までは数ある安全機器のうち、状態を検知する「入力機器」を取り上げてきました。次回からは、「入力機器」の信号を受けて適切な制御を行うための判断に使える「論理機器」を紹介していきます。