無線LANは今後、どこまで速くなるの?

(イラスト・アニメーション:岸本 ムサシ)

今回の回答者:
インテル
グローバル・セールス&プラットフォーム・マーケティング事業本部
ネットワーク・マーケティング・マネージャー
梅野 光

 現在の無線LAN規格で実現可能な最高伝送速度は、IEEE 802.11nの600Mビット/秒。一方で、一般に入手できる製品での最高伝送速度は450Mビット/秒です。では将来600Mビット/秒が実現した後、無線LANはどこまで高速になるのでしょうか。

 ある程度の目途が付いている範囲でいうと、次世代の無線LAN規格であるIEEE 802.11ac/adでは理論上約7Gビット/秒を達成できる見込みです。これは、いろいろな手法を組み合わせたことの結果です。

 ここではIEEE 802.11acを例に、順を追って無線LANを高速化する手法を見ていきましょう。高速化する手法はいくつかありますが、そのなかで効果が大きいものは、「MIMO(Multiple Input Multiple Output)でストリーム数を増やす」と「無線LANの電波が使う周波数の幅を拡大する」の二つです。

 MIMOは、複数のアンテナを使って高速なデータ伝送を実現する仕組みです。無線LANアクセスポイントと無線LAN子機に複数のアンテナを搭載し、データを送信する側はデータを複数のストリームに分割して、別々のアンテナから並列で送り出します。ストリームは、データの流れと考えればよいでしょう。受信側も複数のアンテナを使ってストリームを受信し、元のデータに復元します。このストリーム数を増やせば、より多くのデータを並列で送れます。もう一つの手法である周波数幅を拡大するほうは、チャネルを複数使うことで、一度に送出するデータ量を増やします。

 この二つ以外の手法もあります。無線LANで使用するQAM(Quadrature Amplitude Modulation)という変調方式を工夫したり、無線LANフレームの中のヘッダーが占める割合を低くしたりします。こうすることでも、一度に送受信できるデータが増えます。これらの手法を併用することで、前述の7Gビット/秒を達成するのです。

この記事はITproのコラム素朴な疑問 Q&Aから転載したものです。