ウエーハ端(ウエーハ・エッジ)の検査の重要性が高まっている。これまで主にウエーハ・メーカーが必要とする検査だったが,LSIメーカーがチップ製造工程で活用する必要が出てきた。45nm以降での液浸露光の導入によって,ウエーハ・エッジの欠陥が歩留まりを低下させる可能性が高まるためである。ここへ来て,検査装置最大手の米KLA-Tencor Corp.も,エッジ欠陥検査装置を市場投入した。連載の第3回は,こうしたウエーハ・エッジの欠陥検査手法について紹介する。

液浸部の液体でエッジのレジストがはく離
液浸露光後のウエーハの全周囲の撮像結果。エッジ端面に対して上方33.1度の位置から撮影した。液浸部の液体によるレジストのはく離を確認できる。レイテックスのデータ。
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野原 直行
 レイテックス
 営業本部 国内営業部

 LSI製造工程におけるウエーハ・エッジの検査の重要性が高まっている(図1)。エッジで発生した欠陥や異物が,デバイスの歩留まり低下を招きやすくなってきたためである。特に,液浸露光が導入される45nm世代以降に,その影響が深刻化する。エッジの異物が液浸部の液体に混入してデバイス領域に移動し,露光時の結像を悪化させたり,液体がエッジのレジストをはがしたりする懸念がある1)。そこで,ウエーハ・エッジの欠陥や異物をいち早く見つけ出し,それに対処する必要が出てきた。

図1●ウエーハ・エッジを検査
ウエーハ・エッジはいくつかの部分から構成される。パターン周辺領域,エッジの傾斜部(ベベル),およびエッジの端(エッジ端面)である。レイテックスのデータ。

 本稿では,まず,ウエーハ・エッジに欠陥や異物が生じる要因と,それがデバイスの歩留まりに与える影響を整理する。次に,ウエーハ・エッジの欠陥や異物を検出するわれわれの検査技術を紹介する。

エッジに欠陥や異物が発生

 LSI製造工程において,ウエーハ・エッジに欠陥や異物を生じさせる可能性のある工程は大きく三つある。

 第1に,ウエーハの搬送工程である。エッジがロボットや搬送ケースに接触し,重金属元素などが付着する可能性がある。この重金属元素は,拡散工程でエッジからデバイス領域に拡散してしまう。第2に,熱処理工程である。一般にLSIメーカーは,処理時間を短縮させる傾向にある。ウエーハ面内の場所による温度バラつきが大きくなり,ウエーハ内部の熱応力が増大してエッジにスリップ欠陥が生じる懸念が高まっている。エッジにスリップ欠陥が生じると,そこを起点に欠陥が成長し,ウエーハを破壊する可能性がある。第3に,エッチング工程である。デバイス領域は均一にエッチングされるが,エッジ領域にはエッチング保護膜が残ってしまう。

 これらの要因でウエーハ・エッジに生じた欠陥や異物を検出できれば,それを除去する手法は用意されている。化学的に除去する手法と物理的に除去する手法がある。前者は,化学薬液による有機膜の除去や,Si膜のはく離を利用したエッチング,ウエーハ・エッジ表面の傾斜部(上ベベル)の洗浄などである。後者は,エッジの研磨2)やブラシ洗浄3)などである。ブラシ洗浄は,特にウエーハ・エッジ裏面の傾斜部(下ベベル)に付着した薄膜の除去に有効である。