半導体デバイスの付加価値を高める技術として,材料技術の重要性が高まっている。これまでは微細化に頼るところが大きかったが,今後は材料技術を駆使して高速化や高集積化,小型化などの付加価値を生み出していく。これはウエーハ・プロセス工程,パッケージング工程に共通の課題である。この連載では,デバイスのさらなる進化に材料技術がどのような役割を果たすかを解きほぐしていく。連載第1回の今回は,半導体材料の市場動向について米SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が解説する。

 LSIは45nm世代を迎え,MOS FETの性能向上に向けて新材料の採用事例が増えている。市場面でも,半導体部材はここ5年間,平均で10%/年を超える成長を続けている。2010年の半導体材料の市場規模は5兆円を超える見通しである。

 半導体分野における部材の特徴は,日本メーカーが世界的に強いことにある(図1)。「SCQI賞(Supplier Continuous Quality Improvement Award)」の受賞企業に日本メーカーが多いことがそれを象徴している。SCQI賞は,米Intel Corp.が独自の評価基準に基づいて,同社と取り引きのある装置・部材メーカーに毎年3月に授与する賞である。評価項目は,製品の価格や品質,供給体制,納期など多岐にわたる。毎年10数社が表彰されるが,そのうち平均して約70%を日本メーカーが占める。東京エレクトロンやSUMCOなどの大手に混ざって中小の材料メーカーが表彰されることが多く,この分野での日本の層の厚さを感じさせる。過去の受賞企業には,スパッタリング用ターゲットに強みを持つ日鉱金属,ハンダ材料の千住金属工業,パッケージ材料の新光電気工業,フォト・レジストの東京応化工業などがある。

図1●部材技術がデバイス進化の要に
前工程,後工程ともに部材技術がデバイスの進化のカギを握る。主な技術課題とそこに携わるメーカーをまとめた。本誌が作成。

 日本メーカーが部材市場で高い競争力を維持している背景には,長年かけてユーザーとの信頼関係を築いてきたことがある。この分野では,日本メーカーの地道な研究開発,安定した製品品質の確保,顧客の要求への着実な対応などが高く評価されてきた。そのため,海外メーカーにとっては参入障壁の高い分野といえる。例えば,韓国メーカーの部材市場への参入の動きに対しては,日本メーカーが追い越されることは当面はないとの指摘が多い。