前回(第7回)はゲート・プロセスの原理と動向を解説した。今回は、45~32nmノードで量産化するプレーナ構造のMOS FETを前提に、high-k 膜とメタル・ゲートの具体的な材料候補および成膜装置について解説する。
high-k膜はHfSiO系に収束
high-k膜の候補としては,耐熱性の高さや,Siとの反応が抑制できることからHfSiOが主流になると考えられている。耐熱性はSiの導入及びNの導入によって改善できる15,16)。この耐熱性は,すでに述べたようにゲート・ファーストのプロセスを構築する上で重要である。また,HfSiOはキャリア移動度を劣化させる原因となる電荷トラップの水準をHfOに比べて低くできる17)。
high-k膜の成膜は,HfSiO膜だけではなく,その前後に膜処理が加わる。具体的には,(a)界面層の形成,(b)HfSiO膜の成膜,(c)酸化または窒化処理,(d)高温のアニール処理となる。このような一連の処理を連続的に行うためには,複数の処理チャンバを搭載したクラスタ装置が必要である(図6)。
(a)界面層とは,high-k膜とSi基板の間に挟む薄いSiO2膜を指す。Si基板上にhigh-k膜を直接形成すると,膜厚や膜質,界面の状態を制御しにくい。そこで,事前に界面層を成長させておくことが重要となる。ただし,界面層を厚くしたのではゲート絶縁膜全体のSiO2換算膜厚が厚くなってしまうので,いかに薄く高品質に作るかが重要になる。
われわれは界面層の形成用装置として「UVRF」と呼ぶモジュールを開発中である(図7)。ウエーハを回転させながらUV光を照射してSi表面を酸化することによって,膜の均一性を高めている。このようにして成長させたSiO2膜は界面層として十分な品質を持っているとの報告18)がある。また,SiO2膜は,Si表面の状態によらず成長でき,その成長速度は極薄膜の領域でも十分に制御性が高い。また,このモジュールではUV光によるSiO2成長後,連続してラジカル窒化も可能なため,SiONの界面層を形成することも可能である。