デバイスの高集積化を支えるプロセス技術は,全体をモジュール・プロセスに分割し,検討できるようになった(図9)。これは,1990年代後半にCMPが導入され,ウエーハをほぼ理想的な平坦状に加工できるようになったためである。各モジュールを組み合わせることによって,さまざまなデバイスを実現できる。モジュールごとの個別の説明は次回以降に譲り,ここでは自己整合技術について紹介する。

図9●プロセスのモジュール化が進展
1990年代後半にCMPが導入され,ウエーハをほぼ理想的な平坦状に加工できるようになったことで,プロセス技術のモジュール化が進んだ。各モジュールを組み合わせることによって,さまざまなデバイスを実現できる。著者のデータ。
[画像のクリックで拡大表示]

下地の特性を利用して微細加工

 微細加工は,リソグラフィの解像能力に加えて,下地や被加工層の材料の違い,物理的な構造を利用してパターンを形成する総合技術である。後者を利用するものが自己整合技術である。ここで,自己整合技術とは「着目しているLSI上の下層パターンに対し,物理的構造あるいは化学的反応の差異を利用して,マスク合わせなしにその下層パターンに位置的に整合した上層パターンを選択的に形成する技術」と定義する。

 自己整合として認識されているプロセスは,自己整合コンタクト,サリサイド,ボーダーレス配線,デュアル・ダマシンなどがその代表的な例として挙げられる。以前はLOCOS(local oxidation of silicon)21),Siゲートなども代表的な自己整合技術として認められていた。側壁スペーサ形成,選択成長なども自己整合技術の範ちゅうに入る。主要な自己整合技術のnチャネルMOSトランジスタへの適用例を図10,図11に示す。

図10●自己整合プロセスの事例
(a)Si3N4膜,素子分離酸化膜,チャネル・ストッパのB打ち込みが自己整合する。(b)ゲートとドレインが自己整合する。(c)ゲートとスペーサが自己整合する。その後,全面にTiやCoなどの金属を蒸着し,熱処理すればSiとシリサイドが自己整合する。これをサリサイド(self―aligned silicide)と呼ぶ。(d)ゲートとコンタクト孔が自己整合する。これを,自己整合コンタクト(self―aligned contact:SAC)と呼ぶ。Wプラグ,ゲート,ソース・ドレインも自己整合する。(e,f)デュアル・ダマシン法により,Wプラグと接続電極,配線電極が自己整合する。著者のデータ。
[画像のクリックで拡大表示]
図11●ドッグボーン配線からボーダーレス配線へ
これまで配線の第1層と第2層を接続する場合,マスクの位置合わせがズレると,ビアが過剰にエッチングされる問題があった。このため,従来は(a)の「ドッグボーン配線」が使われた。一方,例えばビアにWを使うと位置がズレてもエッチングされないので,(b)のような「ボーダーレス配線」が使える。ボーダーレス配線の方が高密度化できる。著者のデータ。
[画像のクリックで拡大表示]