これまで、スイッチの選定・使用のポイントについて電気的側面機械的側面から解説しました。今回は安全規格という観点で、安全規格自体の概要やそれをスイッチに適用した場合の要点について解説します。

安全規格の定義

 安全規格とは、電気機器のユーザーを感電や火災といった危険から守る目的で、機器自身や機器に搭載する部品に求められる基準です。事故を防ぐための最低限の基準です。ただし、負荷が微小な領域では感電や火災の危険性は極めて低いので、タクタイルスイッチやディップスイッチなどの微小負荷専用スイッチは安全規格の適用対象にはなっていません。

 電圧の仕様や気候条件、安全の考え方などは国・地域ごとに異なるので、それぞれの国・地域は独自に規格と認証機関を制定・運用しています(図1)。

図1●各国・地域の安全規格と認証機関
[画像のクリックで拡大表示]

規格認証

 ほとんどのスイッチは各国・地域の安全規格によって仕様や性能の基準値が設定されており、スイッチのメーカーはそうした基準を満たすように製品を設計・生産する必要があります。製品が基準を満たしているかどうかを確かめるための試験・評価は、各国・地域が指定する第三者認証機関で行います。試験・評価に合格すれば、安全規格に適合したスイッチとして認証され、市場で販売できるようになります。

 認証を取得すると、メーカーは認証機関から認証書の交付を受け、スイッチ本体に認証マークを表示できるようになります。ユーザーは、安全規格の基準を満たしているかどうかをこの認証マークによって識別します。さらに、スイッチが安全規格の認証を取得していて、ユーザーがそのスイッチを搭載した機器について新たに安全規格の認証を申請する場合、スイッチ単体の試験・評価が免除となることもあります。