[3]直流回路の開閉

 回路をオフにする瞬間にスイッチの接点間に発生する火花をアークといいます。アークは、流れる電流が大きければ大きいほど、また接点の切り替わる速度が遅ければ遅いほど、持続時間が長くなる性質があります。

 交流回路では電流の流れる方向が頻繁に入れ替わるので、電圧が0になるたびにアークは消滅します。一方、直流回路では流れる方向が一定なので、アークの持続時間が長く、接点の消耗によって耐久性が低下します。さらに、片方の接点が溶解/蒸発して他方の接点に転移する現象が起こり、接点表面にできた凹凸が引っ掛かり接点を開離できなくなるという誤動作の原因にもなります。従って、直流回路では必ず直流の定格を持つスイッチを使い、定格条件を守らなければなりません(図4)。

図4●直流回路の定格

[4]微小負荷の開閉

 マイコンに入力する信号用パルスを得る用途などにおいて、電流が数mAの回路を開閉するときの負荷を微小負荷といいます。一般にスイッチでは酸化や硫化によって接点表面に皮膜が形成されますが、微小負荷では皮膜を破壊するための十分なエネルギを得られず、皮膜による接触不良が問題になります。そうした用途では、皮膜の影響を受けにくい金系の接点材料や接触圧力を集中させたクロスバー接点を使った微小負荷タイプのスイッチを使用します。

 加えて、接触不良を起こさないために、スイッチに規定している電流-電圧の使用領域も確認します。例えば、
定格:DC30V 0.1A
最小適用負荷(参考値):DC5V 1mA
という仕様のスイッチは、通電する電流と電圧が図5の台形内に入るように使用します。

図5●微小負荷の使用領域

 最小適用負荷は、N水準参考値(JIS C 5003)としています。これは、信頼水準が60%での故障水準のレベルです。具体的には、200万回のオン/オフ動作で接触抵抗が不安定になる偶発故障が1回発生すると推定しています。