IEEEの標準と日本企業

 IEEEにおける標準化の議論や議決には,IEEEの会員が個人資格で自由に参加できる。Marconi氏の時代からある1906年創立のITU-Rでは,国ごとに代表を立てて議論する。

 携帯電話や衛星通信,固定マイクロ中継回線といった大きな管理組織を必要とするワイヤレス通信には伝統的なITU-Rによる方法が似合うかもしれないが,利用者が管理するような無線LANは業界標準になじむし,ベンチャー企業が直接標準化に貢献できる。結局,テンポの速い議論と決定が可能になる注5)

注5)市場をつくるためには,企業の利害関係が絡むことは当然あり,似たような規格が出てくることや,対立した規格がどうしても出てくる。また,通信事業者も機器メーカーもチップ・メーカーも,利益を求めて新しい分野へと目を向ける。そのため,新しい規格が次々と生まれる。

 筆者は1980年代半ばから,利用者が管理するようなワイヤレス通信を総称して,「コンシューマ通信」と呼んでいた。これはワイヤレス通信が家電化すると考え,今日のような無線LANの繁栄を予想したからである。