低い周波数を新たに開放

 歴史的にワイヤレス通信は低い周波数から利用され,高い周波数に移っていく。技術的には低い周波数の方が簡単に発振と増幅が可能で,伝搬中の減衰も少ないからである。 低い周波数から, 船舶通信,放送,航空通信,アマチュア無線,警察や消防の移動通信,電力/ガス会社の管理用無線,地方自治体の防災無線などに周波数帯域が割り振られた。

 1980年代になると,携帯電話系の自動車電話が登場し,さらに無線LANも登場し,初めて一般人が無線局免許なしに無線機を利用するようになる。1990年代に,無線局に対して政府は電波利用料を徴収するようになる。これは,土地にかかる税金のようなものであり,過去のいきさつから無線局免許を受けているが,大して利用しない無線局には大きな負担となるようにして,使用する周波数の返上を狙ったものという一面がある。その後,利用料は引き上げられた。

 現在,地上デジタル放送とアナログ放送は並存しているが,アナログ放送を2011年に停波し,地上デジタル放送に完全移行する。放送のデジタル化の狙いは,狭い周波数帯域での高品質画像の供給,放送と通信の融合,さらにモバイル受信である。デジタル放送の周波数単位は6MHzでありアナログと変わらないが,そこにHDTV(high deefinition television)が最大3チャネル伝送できる。また,OFDM方式で変調されたこの単位を13セグメントに分割し,中央のセグメントは移動受信用に利用する通称「ワンセグ」放送も始まっている。こうした技術的変革によって,UHFで60MHz,VHFで70MHzの空き周波数が2011年以降に開放される。現在,総務省は開放される周波数の利用についてアンケート調査を基に審議している。