アナログ エレクトロニクスを支える基盤技術
 

公共インフラからコンシューマ通信へ(3)

中川 正雄=慶応義塾大学
2012/10/29 00:00
出典:NE PLUS、2007年4月9日号 、pp.74-75 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 パソコンが世界的に普及した1990年代中盤から無線LANの需要が盛り上がってきたが,相変わらずISMバンドの無線LAN装置の価格は高かった。その理由は,ISMバンドではかなり自由にパラメータを設定でき,それがあだになって装置の仕様がメーカーごとにばらばらになり,相互接続ができない状況にあったからである。

 ここに目を付け,標準化によって規格を統一することで無線LANの低価格化と普及を試みたのは,無線通信を監督するITU-R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector)ではなく,米国の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)と欧州の標準化団体ETSI(European Telecommunications Standards Institute),さらに日本のNTTだった。

 これらの団体が最初に行った技術的な標準化は,変調技術である。広帯域の信号は送信アンテナから空間を伝搬し受信アンテナに至る多数のパスを作る。そのパスの長さがまちまちだと,遅延広がりによって符号間干渉が発生し,特性が劣化する。これに対処するために,二つの方法が提案された。一つは,従来からの一つの搬送波を利用し,波形の歪みを等化して符号間干渉を補償する方法。もう一つは,複数の搬送波によって並列伝送し,個々の搬送波で送るデータ・レートを落として,符号間干渉の度合いを少なくする方法である。

 結局,後者の日本のNTTが推進した複数搬送波の直交周波数多重変調OFDMが,すべての団体で利用されることになった。その上で,5.2GHz帯においてIEEEはIEEE802.11aなどの方式を,ETSIはHiperLAN方式を,NTTはHiperLAN方式と互換性のあるHiSWAN方式を提案し世界標準を目指したが,2000年代初頭のIT不況のためにETSIのHiperLAN方式が撤退を余儀なくされ,互換性のあるHiSWAN方式も同様に撤退した。以後,米国のIEEEが標準規格を独占することになる。

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