日本で始まった携帯電話系通信

 公衆携帯電話(セルラー通信)は,日本が最も早くスタートを切った。1979年にアナログFM(frequency modulation)方式で出発した。FM変調は振幅が一定であり,終段の電力増幅に非線形増幅器を利用できるので,電力効率が高い。これは電池から見ると,充電頻度が少なくなるのでありがたい。アクセス(多元接続)方式は,FDMA(frequency division multiple access)だった。

 デジタル化は,欧州における1992年のGSM(global system for mobile communication)方式の運用に始まり,日本ではPDC(personal digital communication)方式が1993年に開始された。両方とも多元接続方式は,TDMA(time division multiple access)である。変調は,GSMがFMの拡張といえるGMSK(Gaussian filtered minimum shift keying)であり,PDCはπ/4 shift QPSK(quadrature phase shift keying)を採用している。いずれも振幅変動は少なく,電力効率の高い増幅ができる。

米国のベンチャーが新技術を提案

 デジタル移動通信の多元接続方式は,TDMAで決まりと思い始めていた1980年代後半に,米国サンディエゴのベンチャー企業であるQUALCOMM Inc.がCDMA(code division multiple access)方式の利用を発表した。CDMAは,TDMAよりも高い周波数効率を示し,米国のみならず世界中で大騒ぎとなった注4)。CDMAでは,送信するデータの情報帯域よりも伝送帯域を広げており,広帯域伝送を志向するものといえる。

注4)CDMAの開発者は,周波数有効利用率がTDMAに比べて4─5倍高いと主張しているが,場合によっては2倍程度になるともいわれる。