[よく発生する問題]

 近年,パソコンやデジタル・カメラ,PDAなど,情報機器にワイヤレス機能が当然のように搭載されるようになっています。これらを市場に投入するために,ワイヤレスつまり無線に対する認証を取得する必要がありますが,慣れない技術者には頭の痛い問題になることが多いようです。ここでは,ワイヤレス機能を搭載した情報機器の認証取得について解説します。

 機器メーカーでよく発生するトラブルは,認証のための測定を行う段階になって慌てて改造したり,アンテナの位置を変えたりするという事態に陥ることです。実は,このような余計な手間と時間がかかってしまうことが頻発しています。設計者がワイヤレス機能の実装や基本性能の確保に気を取られ,そこまで注意が向かわないのは致し方ない面もありますが,手順さえ分かれば防げるので気を付けましょう。

[原因と対策]

 具体的に説明していきます。認証の直前に慌てる原因は,①認証に必要な測定にどう対応するかを考えていなかった,②認証は地域によって異なることを考慮できていなかった,に大別できます。

 現在,情報機器にはいろいろな規格のワイヤレス機能が装備されるようになりましたが,ここでは広く普及しているBluetoothを搭載した情報機器の認証について考えてみたいと思います。Bluetoothの認証には,2種類あります。一方は,Bluetoothの規格団体(SIG:special interest group)が行うプライベート認証(private certification)です。他方は,各国で存在する電波法認証(radio type approval)です。

 まず,①認証に必要な測定にどう対応するかを考えていなかったケースについて説明します。プライベート認証では,申請者(開発者)は使用しているすべての階層の認証試験を実施する必要があります。つまり開発者は,RFからプロファイル(プロトコル・スタックにおいて上位レイヤのミドルウエアの実装方法を記述したもの)まで熟知しておく必要があります。RF部分の試験については,被測定機器とテスタをつないで,出力電力測定などの送信系と,感度測定などの受信系テストを行う接続試験(Conducted Testing)を実施します。このBluetooth用RFラインにRFコネクタが付いていればテスタとの接続は問題がないのですが,RFコネクタを付けないで設計すると,RF部分の試験のためにRFコネクタを付けるという改造を余儀なくされます(図6-1)。

図6-1 改造でRFコネクタを付けた例
[画像のクリックで拡大表示]