[よく発生する問題]

 WiMAXは,次世代高速データ通信網に使用する通信方式として期待されています。中でも,移動体通信向けのMobile WiMAXは,日本国内でも2007年に周波数割り当てが決まり,2008年にはサービスが本格的に始まる見通しです。

 既に各国のメーカーや通信事業者が開発を進めており,当社も問い合わせを受けることが多くなってきました。よく受ける相談は,①端末と基地局がつながらない,②パワーの測定値が仕様や想定値と異なってしまう,といったことです。WiMAXで使われるOFDMA(orthogonal frequency division multiple access)方式に関連したトラブルが頻発しているので,OFDMAの技術的な理解が重要といえます。

[原因と対策]

 端末と基地局がつながらないという問題(①)の原因はさまざまですが,接続のプロセスの最初からつまずくことが多いようです。端末はまず基地局の信号をモニターし,発呼に必要な情報を獲得します。例えば,基地局がどのような信号を送信しているかを把握し,端末はどの周波数でどれだけのパワーで送信し始めるべきかを決めます。次に,パワーやタイミングの調整など物理層における接続のプロセス(initial ranging)を経て,ネットワークへのオーソリゼーションなど高次のレイヤの接続プロセスに移っていきます。

 Mobile WiMAXは開発途上ということもあり,現在は物理層のトラブルが多発しています。その原因は,タイミング制御のずれやアンプへの電流供給不足による信号歪みなどさまざまですが,ここでは端末が引き起こしやすい,発信機の周波数エラーについて紹介しましょう。

 OFDMAでは,隣り合うサブキャリヤ同士の干渉を避けながら,各サブキャリヤに独立したデータを載せます。Mobile WiMAXの場合,サブキャリヤ間隔が約10kHzと非常に狭帯域のサブキャリヤを1024本束ねて送信します。

 OFDMを利用する無線LANや固定系WiMAXでは,すべてのサブキャリヤが一つの送信機から送られるのに対し,OFDMAでは一つの送信機から送信されるサブキャリヤは飛び飛びの構造になっています(図4-1)。これはマルチパス環境による干渉の影響を分散し,端末がどこにあっても,通信を安定維持できるようにするためです。

図4-1 OFDMAのキャリヤ合成のイメージ
1024個のサブキャリヤを複数のユーザーが共有し,各ユーザーは飛び飛びに利用します。干渉や雑音によって特定の周波数帯の伝搬できなくなっても,通信を安定させやすくなります。
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