構造

 ディップスイッチの一般的な構造を図3に示しました。主な構成部品は、(1)カバー、(2)ストライカ、(3)摺動子、(4)ベース、の4つです。それぞれについて順に説明していきます。

図3●ディップスイッチの基本構造

(1)カバー
 樹脂射出成形部品です。ベースと嵌合(かんごう)させてスイッチ内部の機構を保護します。

(2)ストライカ
 スイッチを操作する部品です。後で説明する摺動子に荷重をかけて接点との接触を安定させる役割を持ちます。人が指で操作するには小さすぎるので、ピンセットのような先の細い工具を使って操作します。

 形状は、先端をカバーから突出させた凸タイプとカバー表面内に収めたフラットタイプがあります(図4)。フラットタイプの上面にシールテープを貼って洗浄できるようにした製品も用意されています。

図4●フラットタイプ(左)と凸タイプ(右)

(3)摺動子
 弾性のある金属板をV字形に加工した可動接点です。ストライカの動きに連動しており、ベースに固定された2つの接点を電気的に接続/遮断することによりスイッチをオン/オフします。

図5●基板穴挿入端子(左)と基板表面実装端子(右)
図6●ボックス形の製品

(4)ベース
 ベースは、金属の端子と接点を樹脂射出成形で一体化したものです。はんだ付けの際に高温になるので、必ず耐熱性を有する樹脂材料を用います。

 スイッチの外側に突き出た端子の一端がそれぞれ内部に引き回されて、1対の固定接点を形成します。端子の形状は、実装方法に応じて基板穴挿入端子または基板表面実装端子から選びます(図5)。固定接点は、金めっきを施すなどして接触信頼性を高めています。さらに、ベース裏面から突き出た端子と樹脂射出成形部品の接合部を液状の樹脂で固めてフラックスの浸入防止対策を強化したボックス形の製品もあります(図6)。

主な使用例

■FA機器や産業用機械のモード設定
 サーボコントローラ、温調器などの工場自動化用制御機器、汎用性の高い自動実装機といったFA機器や産業用機械において、多数ある運転・動作モードから選択する際にユーザーがディップスイッチで設定します。

■PC周辺機器や通信機器の仕様設定
 PC、モデム基板、ストレージなどのプリント基板において、あらかじめ用意された仕様から所望するものをディップスイッチで選択・設定します。