今回は、操作用スイッチに属するタクタイルスイッチを紹介します。

図1●タクタイルスイッチ

 タクタイルスイッチは、主に人が機器を制御するために使うスイッチです(図1)。電気回路を形成するプリント基板上に設置され、人の操作を受けて電気回路に信号を入力するというのが一般的な使い方です。家電/OA機器/業務機器/産業機械などの幅広い分野向けにさまざまな製品が存在します。選定のポイントは、外形サイズ/実装方式/シール性能などです。タクティルプッシュスイッチ、タクティールスイッチ、タクトスイッチとも呼ばれます。

タクタイルスイッチの定義

 タクタイルスイッチは「感触のあるスイッチ」という意味です。人が操作部を押し込むことで電気回路を通電させます。具体的には、操作部を押すとオンに、離すとオフになる「モーメンタリ」といわれる動作になります。通電できる電圧および電流は、小さい領域に限定されます。

特徴

<クリック感>
 タクタイルスイッチのクリック感に関する最大の特徴は、操作したことをスイッチからの反応として実感できることです。この感触は、主にスイッチ内部の反転ばねで作り出しています。この反転ばねの材料や形状により、操作ストロークの大きさや感触のシャープさが決まります。

<耐久性>
 タクタイルスイッチでは反転ばねが可動接点を兼ねており、その材料/表面処理/形状の工夫によってスイッチがオンになったときに固定接点との間に生じる抵抗値(接触抵抗)を安定させることが可能になり、10万~1000万回という高い耐久性能を得られます。

種類

 タクタイルスイッチの種類は、大まかにシール性能と端子形状で分類されます(図2)。

タイトル
図2●タクタイルスイッチの種類

 シール性能については、シール性能がない標準タイプ(ノンシールタイプ)とシール性能を有するタイプ(シールタイプ)に分けられます。そのうちシールタイプは、マイクロスイッチと同様、環境の悪いところでも使えるように防塵(ぼうじん)・防水対策が施されたものです。

 端子形状については、プリント基板への実装方法によって2つのタイプがあります。1つは、手作業などによってまたはプリント基板の裏面をはんだ槽に浸してはんだ付けすることを想定した、比較的足の長いタイプ(基板穴挿入端子)です。もう1つは、プリント基板表面のはんだペーストを熱で溶かしてはんだ付けすることを想定した、比較的足の短いタイプ(基板表面実装端子)です。

 端子形状に応じて供給形態も幾つかの種類があります。基板穴挿入端子のタイプは単品の梱包、棒状のケースにスイッチを整列した状態で装填したスティック梱包や、帯状のキャリアテープに一定の間隔でスイッチを配置したテーピング梱包、基板表面実装端子のタイプは単品の梱包とテーピング梱包が一般的です。

 それぞれのタイプには、横方向から操作するもの(横押し形)、操作ストロークが比較的長いもの(ロングストローク形)、外形サイズが米粒ぐらいのもの(超小形)など、用途に応じて特殊な形状や仕様のタイプが品ぞろえされています。