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HOMEエレクトロニクスアナログ製品企画から量産開始まで全16工程の手順と勘所 > 第9回:できるワイヤレス技術者はここが違う

製品企画から量産開始まで全16工程の手順と勘所

第9回:できるワイヤレス技術者はここが違う

  • 根日屋 英之=アンプレット
  • 2012/06/25 00:00
  • 1/2ページ

 最後に,筆者も含め,ワイヤレスを扱う技術者に今,求められていることを示す。下記の点が優れた技術者は,周囲から一目置かれているし,生き生きと仕事をしている。

 (a)技術の基本の重要性を認識する。家電製品を設計する技術者の中には,無線回路などに携わった経験がないのに,ワイヤレスの設計を担当させられたという人も多いだろう。また,ワイヤレス製品の機器メーカーであっても,過去の製品の設計資産を基に新製品を開発することも多いので,機能拡張などの部分的な設計しかしていない技術者が増えている。こういう技術者は,無線について,基本を学ぶ機会がほとんどない。そのため,技術的にコアな部分の設計ではなく,表面的な設計しかできないという悪循環に陥りやすい。しかし,どんな新しい技術も基本の積み重ねでできているので,時間を取って勉強してほしい。知識の基礎が固まると,伸び伸びと楽しく仕事ができるようになる。

 (b)CAD信者にはならない。CADはあくまでも設計ツールである。CADに信頼を置きすぎると,CADに登録された設計方法を模倣する能力しかなく,新しいものを作る発想が生まれない(経験の浅い技術者には模倣することも大切ではあるが)。CADに頼ると,設計の考え方,やり方を理解する機会が減り,トラブルが発生しても原因を追究できず,適切な対策を講じられない。たまには自分で徹底的に考える設計も大切である。

 (c)手配師に徹しない。機器メーカーの技術者は,協力会社などと協業しなければならない場合もあるが,そこで手配だけに徹してしまうケースが多い。協力会社からの成果にも常に目を通し内容を把握していないと,機器メーカーの技術者には何も技術が残らない。

 (d)海外の技術者の実態を知る。欧米には高い技術力を持つ技術者がたくさんいる。特にシステム設計者の割合は,日本に比べ多いように感じる。最近では,シンガポールやインドの企業が作ったICの要素回路やソフトウエア・モジュールなどIPの紹介が弊社にも増えてきたが,優れていて興味深いものが多い。また,アジア各国では日本の機器メーカー以上の製品を作るために頑張るという意識が強い。製造業務が人件費の安いアジア地区にかなり流出してしまったが,設計・開発業務も日本から流出しかねない。日本の若い技術者は,海外の技術力に注意を払ってほしい。

 経験の一つを述べると,筆者は1993年から韓国政府(当時の韓国通産部中小企業振興公団)の無線通信専門家という肩書で,頻繁に韓国を訪問している。韓国の中小企業に対し,ワイヤレス製品の設計から製造に至るまで技術指導を行うと同時に,当時,韓国政府が国策として世界初のサービスインを目指していたCDMA対応の携帯電話機の設計に筆者も参加するためだった。韓国の技術者は,日本の技術に追い付け追い越せという気持ちが強く,若い技術者からベテランまで非常に熱心だった。彼らはアグレッシブだが,非常に素直で謙虚であり,技術者として必要なことをしっかり勉強して,技術全体を見渡せるように努力を惜しまなかった。このとき筆者は,日本の技術者は自分たちの技術を過信し,のんびりとしているようにさえ感じられ,それほど遠くない未来に,日本の技術は韓国に追い越されるのではないかという危惧を抱いた。

 また,米国に行くと,非常に頭の切れる無線機器のシステム設計者によく出会う。加えて,米国では学生(留学生も含む)の気質も日本と異なる。彼らの中には,学生時代からビジネスに対する大きな興味を持ち,実際にビジネスに参入している者が少なくない。彼らは技術の勉強もしているが,自ら作った開発ツールを使って実際に高性能なワイヤレス製品の試作機まで作り上げてしまう。また,自分が開発したものを導入する市場まできちっと論ずるのを見ると,米国の底力を実感する。

 (e)視野を広げる。世の中の流れとして,終身雇用制度が崩れ,優秀な専門技術を有する人材の転職や起業などが始まり,分業化が進んでいる。老舗といわれる機器メーカー(大企業)でも,このような外部の企業との協業が当たり前のようになってきており,市場で勝ち組となるために有能な外部の企業を探し出し,そこと組むことが必須になってきた。このように組織が複数にまたがるプロジェクトを,機器メーカーはうまく取りまとめなければならない。技術者であっても,自社の枠の中にとどまってはいられない。視野を広げ,率直に外部と付き合う心構えを持つことが必要だ。

 機器メーカーの技術者であれば,全体のまとめ役にもなる。プロジェクトの成否は,まとめ役にかかっており,全体像や基本を把握できていないために,泥沼に陥ったプロジェクトは多い。なお,外部の協力会社や専門家との協業も大切だが,前述のように機器メーカーのまとめ役は,自分が技術者であることを忘れてはならない。まとめ役が手配師のみに徹してしまうと,決して良いワイヤレス製品はできない。

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