③ 機能ブロック図の各ブロックの  レベル配分を行い機器劣化を見積もる

 システム設計者は,レベル配分や機器劣化配分を行い,機能ブロック図の各ブロックにおける出力電力や特性を設定する。ここでは,図3図4に挙げたワイヤレス製品の送信部と受信部の機能ブロック図を基に説明する。

図3 ワイヤレス通信機器(送信部)の機能ブロック図
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図4 ワイヤレス通信機器(受信部)の機能ブロック図
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 その前に図3について説明しておくと,これは近年,話題になっているプリディストーション回路を搭載した例である。非線形増幅器と逆特性の歪みを発生する非線形歪み発生回路を設けて歪みを相殺する技術で,歪み発生回路を前に置くものをプリディストーション,後に置くものをポストディストーションという。送信用の大電力増幅器の効率を改善することにより,消費電力を低減できる。図3中のカプラで検出した歪みのある送信信号を,直交復調しA-D変換器で量子化してベースバンド回路に戻し,デジタル信号処理で逆極性の歪みを作成する。大出力の増幅器で低歪み特性を要求すると,増幅器の効率は非常に低く,消費電力が大きくなる。歪みをある程度許容し,増幅器の効率を高めることにより低消費電力化が実現できる。

 さて,レベル配分については,各ブロックの利得,損失,雑音配分を行い,所望の信号レベルが送信部(図5は一例)や受信部(図6は一例),さらに局部発振器のそれぞれの出力で得られるように配分する作業を行う。 雑音配分は,NF(noise figure,雑音指数)と呼ばれる指数で評価する。図7のブロック図と式でトータルのNFtを計算する。ここで,各ブロックのNFtや利得(G)は真数(デシベル(dB)値ではない実際の値)であり,損失や減衰器のNFは減衰量そのものの値となる。

図5 送信部レベル配分の一例
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図6 受信部レベル配分の一例
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図7 NF(雑音指数)の計算
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