① 製品を企画する

 ワイヤレス機能付きの製品を作るときは,まず製品を企画する。主に,

(a)どのくらいの価格を想定して製品化するか
(b)市場が望む製品になるかどうか
(c)電波法に適合する製品か

などを協議して詰める。ここである程度の製品の青写真を思い浮かべられないと,コストと価格を概算できない。想定していた機能を実現できずに途中で開発を断念するという悲惨な結果になるので,おろそかにはできない。

 具体的に,(a)では市場での機器の値ごろ感を踏まえ,開発費から製造コスト,認定取得,技術サポートまで総合的な観点で概算価格を見積もり,価格競争力があるかどうかを検討する。

 (b)については,自分が使う立場になって考え,自分が使いたいかどうか,想定した価格で購入したい製品かを考えてみるとよい。

 (c)では,製品が電波法に抵触しては販売できない。製品企画の担当者は,本来,法規制や輸出規制などについての専門家ではなく,また規制は頻繁に変わるものである。さらに,業界団体の規格(例えば,無線LANのWiFi規格など)もあるので,それも含めて検討しなければならない。こうした動向に詳しくない企業では,ワイヤレス製品の代行認定取得会社などから専門的なアドバイスやコンサルティングを得ることが少なくない。

 現在はワイヤレス製品の市場が大きくなり,専用ICやモジュールの品数が増え,部品メーカーのサポート体制も充実してきている。従って,以前よりもワイヤレス製品を実現しやすくはなっている。それでも設計の全体像や勘所を知らないために,コストが超過したり,製品販売先の国ごとに微妙に異なる電波法や規格の細部を見落とすというトラブルが後を絶たず,その対策に追われていたりするケースも現実にある。

 ワイヤレス技術は,高周波やアナログの開発経験がないと理解できない。熟知した技術者でさえも高周波回路の設計や実装,部品の調達で失敗することがある。自分の部署に経験者がいなかったら,他部署のワイヤレス技術のベテランや社外の専門家を探して支援してもらう方がよいだろう。

 単に製品のイメージのみを1枚のポンチ絵として当社に持参する機器メーカーもある。ワイヤレス製品が主力でない機器メーカーについては,前述の(a)~(c)を一緒に考える。ポンチ絵しか描けない機器メーカーでも,企画から十分に検討し段階を踏んでいけば,競争力のあるワイヤレス製品のビジネスが可能になる。