スイッチは、ものづくりの現場から日常生活に至るまでさまざまな場面で使われているなじみの深い電気部品の1つです。スイッチでは、外部からの力を受けて機械的に電気信号の切り替えを行います。具体的には、電気回路の「オン」「オフ」の操作や、回路自体の切り替えなどに使われています。

 例えば、図1のように電源とランプにスイッチを接続すれば、スイッチを押すという外部からの力によって、ランプを点灯させる「オン」操作やランプを消灯する「オフ」操作を行えるようになります。一方、図2は回路の切り替え操作に使用した例です。スイッチを押していない状態ではL1回路のランプが点灯しますが、スイッチを押すことによって回路を切り替え、L2回路のランプを点灯させています。

図1●オン/オフ操作にスイッチを使用した例
図2●回路切り替え操作にスイッチを使用した例

接触仕様による分類

 スイッチの接触仕様には、(1)a接点(2)b接点(3)c接点、という3つの種類があります。接触仕様とは、「スイッチを操作したら(押したら)接点が閉じる」といったような、操作状況と接点状態の関係を指します。用途に応じて適切な接触仕様のスイッチを選ぶ必要があります。ここでは、各接触仕様のスイッチについて簡単に紹介します。

(1)a接点
 a接点は、スイッチを操作していないときは2つの接点が離れた状態(オフ)で、操作したときに接触した状態(オン)になるものをいいます。スイッチを操作することで負荷(ランプやモータといった、回路に接続されて電気エネルギを消費するもの)を動作させたい場合はa接点を使います。実は図1で紹介した回路ではa接点を使っており、スイッチを操作して(押して)いないときはランプが点灯しませんが、操作したときにランプが点灯します(図3)。

図3●a接点のスイッチを使用した例
図1と全く同じ図。a接点を使っていることが分かる。

(2)b接点
 b接点は、a接点と逆の接触仕様になります。すなわち、スイッチを操作していないときは2つの接点が接触した状態(オン)で、操作したときに離れた状態(オフ)になるものをいいます。図4の回路では、スイッチを操作して(押して)いないときはランプが点灯していますが、操作したときにランプが消灯します。スイッチを操作することで負荷の動作を止めたい場合にb接点を使います。

図4●b接点のスイッチを使用した例
a接点とは逆に、スイッチを操作したときにオフになる。

(3)c接点
 c接点は、a接点とb接点を組み合わせて1つのスイッチとしたものです。c接点の端子は、共通端子(COM:コモン)、常閉端子(NC:ノーマルクローズ)、常開端子(NO:ノーマルオープン)の3つです(図5)。スイッチを操作して(押して)いないときは共通端子と常閉端子が導通し、スイッチを操作した(押した)ときは共通端子と常開端子が導通します。c接点は、スイッチの操作により2つの回路を切り替える用途に使います。

図5●c接点のスイッチを使用した例
a接点とb接点を組み合わせた構造で、回路を切り替える用途に使える。

スイッチの種類と分類

 スイッチは、搭載対象や目的によってたくさんの種類が存在します。搭載対象別では、大規模な産業機械や設備に使われているスイッチがリミットスイッチや押ボタンスイッチです。これらは、大型で堅牢な構造を持っているのが特徴です(図6)。一方、マイクロスイッチや小形検出スイッチ、タクタイルスイッチ、トグルスイッチ、プッシュスイッチ、ロッカースイッチ、サムロータリスイッチ、ディップスイッチは中小規模の業務機器や民生機器に使われています。小型・低背という特徴を生かして機器の小型・薄型化、軽量化に貢献しています。

図6●搭載対象による分類

 スイッチの主な目的は、検出/操作/設定の3つに分類できます(図7)。そのうち検出用スイッチとしては、物体の位置を検出するリミットスイッチ、マイクロスイッチ、小形検出スイッチがあります。これらのスイッチでは、さまざまな用途において精度の高い位置検出が可能です。

 人が操作することで機械や機器への入力を行う操作用スイッチには、押ボタンスイッチ、トグルスイッチ、プッシュスイッチ、タクタイルスイッチ、ロッカースイッチなどがあります。これらのスイッチは、人と機械のインタフェースを高める役割を果たします。

 設定用スイッチには、サムロータリスイッチおよびディップスイッチがあります。これらのスイッチは、主電源がオフになっても設定値が残っているというメカ式スイッチの強みを生かし、機械・機器の機能や動作モードを切り替える用途に使われています。

図7●目的による分類

 次回からは、それぞれのスイッチについて構造や特徴を詳しく紹介していきます。