しかしCDMAの強みは,隣接するセルで同じ周波数を利用できるということです。図2を見ると,TDMAでは自分のセルで用いている周波数と同じ周波数を用いると干渉してしまうので,隣接セルには異なる周波数を割り当てることになります。しかしCDMAでは,逆拡散により隣接するセルからの干渉を雑音のように扱うことができます。よって,図2のモデルでは,TDMAに比べてCDMAは7倍の周波数利用効率を達成していることがわかります(ちなみに実際には,符号多重といっても無線伝搬路の影響でお互いに干渉が生じることや,他セルからの干渉などにより,7倍の周波数利用効率にはなりません)。上記の周波数利用効率の良さに加えて,近隣のセルと周波数が同じであるため,ソフト・ハンドオーバーが可能であることや,本来は干渉となる遅延波をも合成して利得を上げるレイク受信といった技術が盛り込めます。

†レイク受信= 電波をかき集めて受信する方法。レイク(Rake)という英単語は,「くま手」を意味する。遅延波を干渉波ではなく遅れてきた波として判別し,位相やタイミングのずれを補正して取り込む。レイク受信によって束ねられた信号は直接波のみの信号よりも強くなり,伝搬路の影響を減らせる。

図2 CDMAは周波数利用効率を高められる
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 一方近年では,無線MANや無線WANではCDMAに代わってOFDMが主流となっています。OFDMは各サブキャリヤを直交させて配置するために周波数利用効率が良いのです。ただし,FFT(高速フーリエ変換)による複雑な演算を必要とするため,以前は実用化が困難でした。しかし近年のASICやプロセサの目覚しい進歩により,802.11a/gでの実用化を皮切りに注目を浴び,無線MAN/無線WANでも使われるようになったのです。OFDMが主流となっている背景には,近年の高速化にともない,利用する周波数帯域幅が広くなっていることが挙げられます。周波数帯域幅が広くなると,シングル・キャリヤでは様々な周波数成分が伝搬路の影響を受け,波形の歪みが大きくなります。CDMAもシングル・キャリヤなので,この歪みを補正するための等化器(レイク受信器)が必要となります。OFDMでは前述のようにサブキャリヤを重ねて送るために伝送効率が高く,しかも個々のサブキャリヤの帯域幅は狭いために,サブキャリヤ単位では波形の歪みを補正することが容易になります。そのため,簡易な等化器の構成でもそれなりに性能が得られる傾向があり,広帯域の通信に適していると言われています。