無線MANや無線WANでは,伝送速度向上はもちろんですが,基地局当たりの収容人数を増やす技術も重要になります。その際に特に重要なのが,多元接続技術です。表2を見ると,これがTDMAからCDMAへ,さらにOFDMA(orthogonal frequency division multiple access)というように変わっていく流れが見えてきます。これらの多元接続方式の違いを図1に示します。

様のことを行うと,端末Aの信号が逆拡散後には0になり,端末Bの信号を取り出すことができます(図1(b))。

図1 主な多元接続技術の概要
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 図1(a)のTDMAは,同一周波数帯を使って時分割で送信します。一方,3Gで採用されているCDMAは,前述のスペクトラム拡散で用いた符号のパターンを変えて,異なるユーザーに割り当てます。例えば基地局側で,端末Aに{+1,─1,+1,─1}という拡散符号を割り当て,端末Bに{+1,+1,─1,─1}という拡散符号を割り当て,多重して送信します。その場合,端末Aで自分の拡散符号である{+1,─1,+1,─1}を受信信号に乗算して4チップ分加算すると,多重されていた端末Bの信号の加算値は0になります。逆に端末Bで同様のことを行うと,端末Aの信号が逆拡散後には0になり,端末Bの信号を取り出すことができます(図1(b))。

多元接続を発展させて収容人数を増やす

 ここで,周波数利用効率について考えてみましょう。TDMAやFDMAでは,信号を時間もしくは周波数に分割しています。そもそも原理的には時間で区切るか,周波数で区切るかの違いなので,単位時間・単位周波数当たりで送ることができる情報量は理想的にはほぼ同じです(実際にはTDMAにはユーザー間を時間的に区切るガード・タイムが,FDMAには周波数的に区切るガード・バンドが存在します)。一方CDMAは信号をN倍に拡散してしまいますが,Nユーザーまでの多重が可能なので,送れる情報量はやはりTDMAやFDMAと同じになります。つまり,原理的にはTDMAもFDMAもCDMAも,周波数帯域などが同じなら送ることができる情報量に差はありません。実際のところ,CDMAではN倍に拡散したからといっても伝搬路の影響などでNユーザーまでの多重は不可能なので,むしろ情報量は少なくなってしまうかもしれません。