表2 無線PAN/無線LANの概要と特徴
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 次に,無線PANと無線LANの各規格を技術の角度から分類してみましょう。 無線PANと無線LANを理解するポイントは,前述のように周囲の電波発生源からの干渉に強くしながら,高速化を進めていることです。表2を見ると,無線PANと無線LANが,まずはスペクトラム拡散を使って市場を広げてきたことが分かります。最近は伝搬路の影響に強く高速化が可能なOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)や複数のアンテナを使うMIMO(multiple input multiple output)という多重化方式を使うようになりました。以下では,一つずつ解説していきましょう。

スペクトラム拡散で干渉を避ける

 まず,スペクトラム拡散から始めましょう。この言葉は少しとっつきにくいですが,説明を受けた人の多くが「ワイヤレス通信はこんな面白いことをやっているんだ」と感心する技術です。

 スペクトラム拡散は,拡散前の図1(a)の信号を,送信するときに大きく変えます。直接拡散(DS:direct sequence)方式の場合,図1(b)のように雑音レベル以下で信号を送りつつ,後で信号を復元します。周波数ホッピング(FH:frequency hopping)方式の場合は,周波数を高速に切り替えることで時間的に干渉を回避します(図1(c))。両者共に拡散前の帯域よりも広い周波数帯域を必要とするため,スペクトラム拡散といわれています。

図1 スペクトラム拡散によって干渉を回避
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 Bluetoothが利用する周波数ホッピングは,周囲の競合する周波数を避ける方法です。周波数を決められたパターンに従って変えるので,あるタイミングで他の機器から干渉を受けても,次のタイミングではその周波数を回避することができます。これは理解しやすいと思います。ここでは無線LANが利用している直接拡散について説明しましょう。