コスト/消費電力が小さくなる主流の規格を見極める

 ワイヤレス機能を実現するためのコストや消費電力は,規格の変復調技術などによって大きく変わってきます1)。概して伝送速度が高い新しいシステムほど,これらは大きくなります。通常は高速になるに従って複雑な技術を使っており,それだけRF(radio frequency)回路や変復調などの信号処理が大規模なものになっていくからです。

 ただし,実際は伝送速度や規模だけでは決まりません。なぜなら新しいシステムが普及した場合,チップ・メーカーはこぞってそのコストや消費電力の削減に注力するからです。開発に力を入れなくなる従来のシステム向けチップのコストや消費電力が変わらない一方で,新しいシステム向けはどんどん改良され,やがて追い付き追い越すことが多々あります。例えば第3世代(3G)携帯電話は,第2世代よりも伝送速度が高くはるかに複雑ですが,現在では消費電力が大幅に小さくなり,待ち受け時間はほとんど変わらない水準になっています。

 また,コストや消費電力は,どんな機能を実装するかにも依存します。例えばIEEE802.11aの54Mビット/秒モードは,IEEE802.11aの規格上はオプションですが,現在の製品には必ず実装されています。また,IEEE802.11nはオプションである40MHzモードを実装するかどうかなどでコストや消費電力は変わってきます。このため,機器メーカー側が要求する機能とチップ・メーカー側が供給する機能が異なると,コストと消費電力が高くなってしまったり,必要な機能を機器に盛り込めなかったりすることになります。

 つまり,規格や市場などの業界動向に気をつけないと,機器開発で後悔することになりますので注意が必要です。