この帯域はオープンな場なので,街中の雑踏のようになっています。このため,ワイヤレス通信を行う機器がお互いに通信を邪魔しないように,干渉を避ける技術が非常に重要になります。さらに,複数の利用者のデータが衝突しないように機器自身が常にスケジューリングを行い,送信できるかどうかを見張る必要があります。

 これに対し,「無線MAN/無線WAN」は,免許を受けた通信事業者が専用の周波数帯域を使って通信サービスを提供します。多数の利用者が使えるように,基地局当たりの収容端末数を増やすことが大切になります。このため,技術的には周波数利用効率を高めなければなりません。また,多数の人が利用しても通信が切れないように,端末の機器ではなく基地局でスケジューリングを行っています。

 このように,「無線PAN/無線LAN」と「無線MAN/無線WAN」では,用途やネットワークの作り方が異なります。ただし,最近はそれぞれ数十Mビット/秒から100Mビット/秒以上へと高速化を進めていることもあり,同じ多重化技術や多元接続技術を使うようになっています。これらの規格や技術の動向は,ワイヤレス機能のコストや消費電力に大きな影響を与えます(最終ページの「コスト/消費電力が小さくなる主流の規格を見極める」参照)。

 以降では,主要規格と技術について,「無線PAN/無線LAN」と「無線MAN/無線WAN」の順に説明します。