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HOMEスキルアップマネジメント電子技術者のための仕事力養成講座 > 第9回:仕事力を高めるための問題解決の考え方と取り組み方(上) 

電子技術者のための仕事力養成講座

第9回:仕事力を高めるための問題解決の考え方と取り組み方(上) 

  • 久井 信也=ソリューションサービス研究所
  • 2012/01/18 00:00
  • 1/1ページ

【前回より続く】

仕事の中では,大小を問わず日常的に問題が発生します。交通事故や労働災害問題でよく知 られているハインリッヒの法則では,大きな事故1件の背後には軽微な事故が29件あり,さらに事故には至らなかったが300件の「ヒヤリハット」があるといわれています。この法則から,企業で発生する問題への取り組みも早期に適切に,対応することが基本です。今回は,問題解決の基本的な取り組み方と再発防止の在り方について考えてみましょう。

 A社は電子機器の開発製造を行っている企業で,全社方針として品質管理を徹底しています。ところが,あるプロジェクトで開発した新商品で,発売直後に電源ボードが過熱し,発煙するという事故が発生しました。幸いにも火災など大きな事故には至りませんでしたが,品質管理を全社方針として取り組んできたA社にとって極めて重大な製品安全上の問題として解決に取り組むことになりました。

 新商品開発のプロジェクトは既に終了し,組織は解散していましたが,プロジェクトに参加していたメンバーが急遽集められて対策の検討に入ります。問題解決チームのリーダーには設計課長のNさんが就いた他,電源ボード開発に参加していた設計者もメンバーとして任命されました。Nさんたちは,まず事故が発生した現場に赴き,事実の確認をしました。

 同じ製品を事故機と同様な環境に置いてテストを繰り返したところ,回路に組み込まれたコンデンサが発熱し,破壊する現象が再現されました。さらに再現テストを進めた結果,コンデンサの性能にバラツキがあったことを突き止めることができました。

最適な解決策を考える

 Nさんは問題解決チームによる調査分析結果を現状報告書としてまとめ,全社の商品安全会議に提出しました。報告書の結論は,下記のようになっていました。

① 電源ボード焼損事故の原因は,回路に組み込んだコンデンサの性能不良

② テスト調査の結果,コンデンサの電極間がリークし,過電流が流れて焼損したことが判明

③コンデンサの製造ロットから判断すると,同コンデンサが組み込まれている製品は1200台

④1200台のうち500台は出庫し,700台は未出荷

⑤全国の販売代理店で既に販売された台数は合計で300台

 このような報告書でしたが,後に続く問題解決のための幾つかの対策案が示されています。どれが最適な案なのか,読者の皆さんも一緒に考えてみましょう。

A案:コンデンサを製造した電子部品メーカーに対して今回の事故に関する責任を追及し,場合によっては電子部品の購入先を変更する。

B案:電源回路設計を見直し,より安全性を高めた商品に改善する。そのために新規開発体制の提案を行う。

C案:該当機種を購入した顧客に対して商品の回収と,新しい商品と交換するリコール手続きを行う。

D案:顧客や販売代理店への補償対応と,問題の根本原因を究明し,安全対策を実施する。これと並行して,電子部品購入時の品質管理の在り方を見直す。

 さて,皆さんはどの案を最適解決策として選びましたか。いずれもそれなりに重要なポイントを押さえているようですが,少し解説を加えましょう。

 A案は,問題の直接的な原因であるコンデンサの不良に着目し,部品メーカーに対応するように要求しています。購入部品の品質保証上,これが必要な処置だと考えたようです。しかし,既に出荷した商品の扱いや顧客への対応が後回しになっているようで,適切な対応と言えないところがあります。

 B案の,問題機種の電源回路を再点検して安全性を高める取り組みも,商品の信頼性回復の処置として効果的であると言えます。しかし,B案もA案と同様に,組織内部の対応としては必要ですが顧客への対応が見えません。

 C案は,できるだけ速やかに顧客の不安感を払拭する対策として直接的で有効な解決策ですが,根本的な対応策についての不満が残ります。

 D案は,顧客や販売代理店に迷惑をかけたという企業の姿勢を示す意味で,大切な施策です。また,単に問題の表面的な解決策だけではなく,品質管理の在り方を含めて問題の根源に対策を講じることも視野に入れた,最も妥当な解決策と言えます。

対策計画書を作る

 結論を言うと,A,B,C三つの案に示されていることも対策事項になります。このような事故の解決に取り組む場合は多くの利害関係者が存在するので,それぞれの価値観を考慮した対策を考える必要があります。

 例えばA社の経営者が重視するのは,① 顧客の信頼を損なわないようにすること,② 他のビジネス活動への影響を極小化すること,などです。一方,顧客は,③安心して使えるように安全対策を施してほしい,といったことが考えられます。販売代理店は,④事故の対応で逸失した利益の補償と,商品の交換が遅滞しないこと,などの要求を考えているでしょう。

 また,現場の営業担当者は,⑤原因究明と対策方針を明確にした顧客への説明の文書を要求し,開発設計部門では⑥進行中のプロジェクト業務との担当要員の調整が課題になり,製造組み立て部門では⑦回収機器の手直し業務の負荷を軽減するために,要員を増やしてほしいなどがあります。

 問題に対応したことで他のプロジェクトが遅延するといった別の事態も発生し,それ自体が新たなリスク要因となる場合があります。問題の性質や状況によって解決の在り方はさまざまですが,その場しのぎの対策では本質的な問題解決になりません。きちんと取り組む場合には,それぞれの利害関係者からの意見を聞き入れ,施策の効果の予測とリスクを考慮した対策計画書を作成します。対策計画書は問題解決をどのように進めるかという証明となり,施策の① 目標,② 優先順位,③スケジュール,を記します。

 この事例では,問題解決施策の選択について問いかけていますが,他にも問題案件がある場合は案件そのものの取り組みの優先順位付けが必要です。問題解決は定常業務の処理と違って突発的であるが故に,パワフルな仕事力の発揮が要求されます。

 そして,問題解決への取り組みの姿勢も大切です。嫌々あるいは仕方がないからという後ろ向きの姿勢では良い対策も出せず,モチベーションも下がります。どうせやるならピンチをチャンスにという積極的な目的や目標に切り替えて,前向きな姿勢で臨みたいものです(前ページの図1)。

図1 問題解決力発揮のステップ
[画像のクリックで拡大表示]

 

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