多くの電子機器で回路の高速化が進み,EMC(電磁環境適合性)への対応が難しくなっている。設計・開発の中盤に差し掛かってから対応を考えていたのでは,技術的にもコスト的にも実現は困難だ。EMC設計の要となるプリント基板の設計はどのように進めるべきか,4回にわたって解説する。
連載
プリント基板におけるEMC適正化設計
橋本新氏
ソーワコーポレーション 開発技術部長。1987年ソーワコーポレーション入社。放送用機器,民生用機器等様々な分野の軽薄短小のプリント回路設計を担当。近年はシミュレーションを併用したフロアプラン重視のEMC適正化設計を主導。2006年より現職。特級プリント配線板製造技能士。
浦田春茂氏
ソーワコーポレーション 開発技術部開発課 技師。1963年沖電気工業入社。テレビ・スタジオ機器,光伝送機器等の開発設計,1993年三英社製作所に移り配電自動化機器等の開発設計,2002年ソーワコーポレーションに移り,EMC適正化設計の教育ならびにコンサルティングに従事。
目次
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第4回:電源・接地への雑音漏洩を防ぐ配置配線の勘所(下)
ここで,電源デカップリング・コンデンサは,EMI低減だけでなく,電源供給系の共通インピーダンスに起因する回路間干渉の防止にも役立つことを説明しておこう。つまり,複数の電気回路が接続されている共通電源と共通接地が持つインピーダンスの影響排除である。
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第3回:電源・接地への雑音漏洩を防ぐ配置配線の勘所(上)
前編では,高速回路を収容するプリント基板のEMC(electro-magnetic compatibility)適正化設計を進めるための主な方針として,?フロアプラン重視の設計プロセス,?EMC適正化ノウハウの蓄積活用,?電磁界シミュレーションの活用,?高速ICとプリント基板のEMC適正化相補対応,…
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第2回:雑音予防設計は「転ばぬ先のつえ」フロアプランでの検討が必須(下)
フロアプランの注意点において,支配的な雑音要因を特定することが重要であると述べた。EMI低減を例に,考えてみよう。最も雑音強度の大きい,支配的な雑音要因を排除すれば,確実に雑音低減効果が得られる。支配的な要因を残したまま他の要因を排除しても,結局,最も強度の大きな雑音が残ってしまう。その結果,雑音低…
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第1回:雑音予防設計は「転ばぬ先のつえ」フロアプランでの検討が必須(上)
「EMC適正化設計」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。EMC(electro-magnetic compatibility,電磁環境適合性)は,EMI(electro-magnetic interference,電磁妨害)低減とイミュニティ(耐性)向上の両立により実現する。一般には「EMC対策…