今回のポイント
●共振は危険速度をもって見極めよう
●危険速度の計算にはたわみが不可欠
●実際の運転では危険速度を回避する

 ここ2回にわたって取りあげてきたたわみは,事故原因として非常に多い共振に影響を及ぼすファクタの一つです。一般に,軸(円形断面)の中心は製作上,幾何学的(理想的)中心から多少ズレた上にたわみます。これがそのまま回転すると,ある回転数で共振し,軸が疲労破壊を起こしやすくなる。このため,設計段階で共振を起こす回転数を予測し,それを避けて運転することが肝要になるのです。

 例えば,軸に取り付けた質量wの回転体の中心が理想的な中心からεズレた上に,軸がδたわんでいるとします〔図1(a)〕。このときの遠心力は,重力加速度gと角速度ωを用いて

図1 軸のたわみと危険速度
(a)軸に取り付けた回転体の中心が理想的な中心からεズレた上に軸もたわむために共振して壊れる恐れがある。(b)その条件。角速度ωが固有角振動数と呼ぶω0と等しくなると共振する。

となります。一方,この遠心力に対抗する力は軸の弾性力。軸のばね定数kを使用して

  kδ

と表せます。今,両者は釣り合ってますから,次式が成立。

これをδで整理し

さらに

と置くと,式(2)は次のように書き換えられます。なお,ω0は固有角振動数です。

 この式(2)’において,一般にはεはゼロではありませんから,分母の値がゼロ,すなわち

になると,δは無限大になります〔図1(b)〕。このときが共振した状態。たわみは無限大だから,軸は計算上壊れることになります。