今回のポイント
●断面積一定で,梁の最大曲げ応力を減らす
●許容応力一定で,梁の断面積を減らす
●断面形状の選択で,安全性や軽量化を自在に設計

 前回は,はりに作用する曲げモーメントの大きさが,両端を固定する場合と支持する場合で異なることを確かめました。今回は,梁に生じる曲げ応力の大きさが,梁の断面形状によって違うことを確認します1)

参考文献
1)沢,「材料力学マンダラ」,『日経ものづくり』,2005年9月号,pp.134-139.

 こうした計算が重要になるのは,例えば曲げモーメント作用面に対して断面形状の選択を誤ると,大きな曲げ応力が生じ事故に発展する恐れがあるからです。逆に言えば,断面形状の選び方次第では安全性を確保しつつ,軽量化や薄型化といった果実が得られることになります。無論,断面形状の加工効率を十分に考慮する必要はありますが。

 今回は,単純な計算の繰り返しになりますが,(1)断面積と最大曲げモーメントを一定とした場合の,断面形状と最大曲げ応力の関係(2)最大曲げモーメントと許容曲げ応力を一定とした場合の,断面形状と断面積の関係―を整理しておきます。きっと,設計上の武器になるはずです。

 こうした計算の基礎になるのは,梁に作用する最大曲げ応力σmaxを求める式(1)です(『再入門・材料力学(基礎編)』参照)。

 式中の(Mxmaxは最大曲げモーメント,Zは断面係数。後者の断面係数Zとは,材料の断面の図心を通る軸に関する断面二次モーメントIを軸から図形の周辺までの最大距離cで割った値。ZとIとcの3者の関係は

で,Zは基本的に付表(p.9,以下同)の値を使います。ただ,そこに掲載されていない断面形状については式(2)を用いて計算する必要があります。では,実際に解いてみましょう。