●分布荷重を2度積分したら,曲げモーメントに
●曲げモーメントが作用するボルト締結部をモデル化
本コラムの第1巻で,技術者には感覚的な「気付き」が重要であることを指摘しました。図面やものを目にしたときに,例えば「ここは危ないんじゃないか」と感じるセンス。こうした気付きが機能すれば,事故は随分と未然に防げるはずです。
今回のテーマである「曲げ」に関しては,特に最大曲げモーメントが作用する位置やおおよその大きさに気付いてほしい。そこでまず,現実に目にする,次の二つのケースについて比較してみましょう。
一つは,軟弱地盤を掘削する際に土砂崩れしないよう,掘削範囲の周囲に打ち込む「矢板」と呼ぶ板。もう一つは,ダムの壁。前者の矢板には土砂による力が,後者の壁にはダムにためた水による力がかかります(図1)。
土圧と水圧。一見,同じように作用するように思えますが,実際には違います。土圧は矢板の根元から先端にかけて,逆に水圧は壁の先端から根元にかけて上昇していきます。こうした広い範囲にわたって作用する力を「分布荷重」と呼びます。ここでは,土圧も水圧も,その大きさは0からw0まで直線的に増加するものと仮定しましょう。
分布荷重を受ける矢板と壁には当然,曲げモーメントが作用します。そこで,問題。矢板と壁に作用する最大曲げモーメントの位置はそれぞれどこか。その大きさは,どちらの方が大きいか。ただし,矢板と壁はそれぞれ「
そして,予想できましたら,次に読み進んでください。
大きな曲げモーメントはどっち?
1問目。恐らく,多くの方が迷わずに「根元」と想像されたことでしょう。正解です。矢板でも壁でも,最大曲げモーメントは根元に作用します。
2問目。これは「矢板」「壁」「同じ」と,解答が多少分かれるかもしれません。その原因は,思考過程にあるはず。論理的に考えていけば,必ずや一つの解答に収束します。